DM ゼミ 要旨 2009


04/16 (木曜) 13:30- 15:30   安達 俊貴

タイトル:

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要旨:
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発表資料:

04/23 (木曜) 13:30- 15:30   武 直樹

タイトル:

北大西洋における高低気圧と熱フラックスの関係

要旨:

北大西洋における総観規模およびそれより小さいスケールの変動は,高解像度のデータの不足により,あまりわかっていなかった.しかし近年,衛星観測やモデルの高解像度化により,そのような規模の現象が詳細に調べられてきている.

本発表では北大西洋における高低気圧と表面乱流熱フラックスとの関係を解析した,Alexander and Scott (1997),Zolina and Gulev (2003) を紹介する.彼らは,伝播する低気圧の後(前)面において,上(下)向きの熱フラックス偏差が発生することを示した.高気圧の場合はその逆であった.

本研究においては,さらに高解像度のデータを用いてその解析の一部を追実験した.その結果は先行論文の結果とほぼ一致した.

また,その解析を行う際に必要な処理として時間フィルタリングがあるが,気象データ(GrADS 形式)に対して手軽にそのような処理を行う環境が存在しなかったため,fortran 用のライブラリを構築し,拡張性をもったフィルタリング環境を整えた.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0423/pub


05/07 (木曜) 13:30- 15:30   近藤 奨

タイトル:

DE-2 衛星による電離圏熱圏結合の観測

要旨:

CHAMP衛星やDE-2衛星などの観測から熱圏電離圏では中性大気とプラズマの間で運動量の輸送が行われていることが明らかになっている.

中性大気とプラズマの相互作用の物理過程を探るためにDE-2 衛星のデータを解析した.その結果,東西方向の中性風はすべての地方時において,地理緯度ではなく磁気緯度に依存した分布を示す.また,東西方向の中性風は高度が高くなるにつれて速度が大きくなる.CHAMP 衛星に搭載された加速度計からも,高度400kmにおいて磁気緯度に依存した中性風の空間分布が得られている(Liu et al., 2009).

中性大気の東西風は,DE-2衛星により測定された東西方向のプラズマドリフトやプラズマ密度とよく似た時間分布を示す.東西風は磁気赤道で,16 MLT - 05 MLT にかけて東向きの風となるが,その時間帯はプラズマドリフトが東向きのドリフトとなる時間帯とほぼ一致している.一方,16 MLT - 20MLT にかけて,プラズマドリフトの東西成分は磁気赤道で極小となり,磁気緯度±10° で極大となる.その時間帯ではプラズマ密度も同様の分布となる.しかし,プラズマ密度の極大は東西プラズマドリフトの極大よりも高緯度側に存在する.

鉛直プラズマドリフトは,磁気赤道で上向きに強まる分布が得られた.上向きドリフトと,プラズマ密度の分布異常の関係は”Froutain Effect” として知られている.しかし,東西プラズマドリフトとこれらの関係は明らかになっていない.

本講演では,プラズマドリフト,プラズマ密度,中性大気風,中性大気密度から熱圏電離圏結合過程について議論する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0507/pub


05/14 (木曜) 14:30- 16:30   堺 正太朗

タイトル:

土星衛星 Enceladus 周辺及び E リングの粒子環境

要旨:

土星内部磁気圏の理解は近年急速に進んでいる.従来の考察では土星磁気圏は地球のそれと似た構造をしている思われていた.しかし,Wahlund et al. (2009) では,従来の考えを覆す結果を示した.

Wahlund et al. (2009) の結果では,土星内部磁気圏のダスト - プラズマカップリングの重要性が示唆された.これにより,磁気圏のプラズマダイナミクスがイオン/電子の二流体の議論だけではなく,荷電ダストを考慮した議論が必要になると考えられている.

本発表では,Enceladus 周辺の粒子環境における近年の研究を紹介する.ダスト - プラズマカップリングを示唆した Wahlund et al. (2009) についても紹介する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0514/pub


06/04 (木曜) 13:30- 15:30   馬場 健聡

タイトル:

木星大赤斑の数値計算について

要旨:

木星には大赤斑と呼ばれる高気圧性の渦が存在している. 東西約 24000 km, 南北約 13000 km のスケールを持ち, 300 年以上に渡り存在し続けている. Dowling and Ingersoll (1989, 以下 DI1989) は, 木星の大赤斑 が発生し維持するための条件を考察する為に, 1.5 層モデルを用 いた数値実験を行った.

1.5 層モデルでは大気を薄い上層と厚い下層の 2 つに分けて考える. 下層は上層の運動の影響を受けずに, 定常な流れ場であるとする. 上層においては流れ場は浅水方程式によって記述されるものとする. DI1989 の 1.5 層モデルは, 回転楕円座標系における浅水方程式 に基づくものである. 彼らの上層の運動方程式には, 観測で得ら れた速度分布に近づける強制項が加えられている. 下層の流れ場と しては, 東西一様な定常流を与えている. DI1989 では, 下層の流れ場として4 通りのものを与えた. 具体的には, 観測で得られる渦の外側の上層の東西流, 流れなしの場, 渦の外側のポテンシャル渦度が一定となる流れ場, 観測された上層の速度分布とポテンシャル渦度保存則を使い 推定された流れ場である. それぞれに対し, 速度分布を実測値に近づける強制項を加えた場合と 加えない場合に関して数値計算を行った. 強制項を加える場合は, 強制のタイムスケールを 400 日に設定した. DI1989 が用いた計算領域は大赤斑を十分に取り囲める範囲, 西経 90〜 東経 90, 南緯 40〜5 である. 東西の壁に周期的境界条件を採用し, 南北の壁では v=0, q=const とした. 初期条件として大赤斑と同程度のスケールを持つ渦を与え, リープフロッグスキームを使って時間積分を行った.

下層の流れ場として, 観測された上層の 速度分布とポテンシャル渦度保存則を用いて 推定された流れ場を使った場合の計算では, 以下の結果が得られた. 上層の渦が, 別に発生する小さな渦を吸収しながら 消散に抗して自己を維持しており, 渦の移動速度, 雲頂における速度の最大値に関しても, ともに観測で 得られた値に近い値を得た. それに対し, 他の 3 通りの下層の流れ場を与えた場合の計算では, 東西風の速度分布や 渦の移動速度が実測値と大きく食い違ってしまったり, 渦の 形が崩れてしまったりした. これらの結果からわかったことは, 木星大気を 1.5 層モデルで表現できると仮定したとき, 下層の流れ場が上層の流れ場, 渦の生成に大きな影響を及ぼす ということである. それにも関わらず, DI1989 では下層を推定する際の近似の妥当性を あまり厳密に議論していないので, 下層の流れをもっと厳密に 考慮する必要があると私は考える.

発表では, DI1989 のレビューを行い, さらに, 私の今後の 研究計画についても発表する. 具体的には, 下層の流れを 考慮したモデルの開発のために, 流体力学および 数値計算モデルに関する勉強を行っていく予定である.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0604/pub


07/09 (木曜) 13:30 - 15:30   山下 達也

タイトル:

deepconv/arare の定式化の再検討 〜arare5の開発に向けて〜

要旨:

deepconv/arare は地球流体電脳倶楽部の dcmodel プロジェクトの製品の 1 つで, 2・3 次元対流を扱う非静力学モデルである.

deepconv/arare は地球大気のみならず, 木星大気や火星大気の乾燥・湿潤対流もターゲットにしている点で他の非静力学モデルと一線を画している.

しかし現状において, deepconv/arare では火星湿潤対流用のモデルと木星・地球対流用のモデルが事実上独立に存在する状態となっている.

このことは火星湿潤対流のモデルと木星・地球対流用のモデルにおいて, 凝結に関わる予報変数が異なることに起因している.

地球モデルで慣習的に用いられている混合比は, 主成分の凝結する火星大気では無限に近い値をとるので, 数値計算上使えないのである.

1 つのモデルで様々な惑星大気の対流を取り扱うことを目標の 1 つとする deepconv/arare としては, 上記の問題を克服し, モデルの統一を図ることが現状における重要な課題である.

本発表では地球・木星・火星・或いはそれ以外の仮想的な惑星の大気のいずれにおいても使える予報変数として「全密混合比」(地球大気のテクニカルタームである「比湿」に相当する物理量)を提案し, それらを用いた場合の方程式系を提示する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0709/pub


07/16 (曜) 13:30- 15:30   徳永 義哉

タイトル:

木星大気の放射モデル

要旨:

木星の大気についてその温度分布や雲の運動について解明するために, 木星大気の放射過程を表現するプログラムを作成した。 大気の放射過程を明らかにすることで対流過程の解明にも手助けになると 期待している。

ただし、現段階では大気が、水素のみで構成されていると仮定し, 断熱大気での、大気の放射と吸収による加熱率を計算するにとどまっている.

この計算より、水素のみの大気では成層圏において放射冷却が 支配的であることがわかった.

今回の発表では、計算の詳しい概要と結果, また 今後, 発表者が作成しようとしている放射モデルの展望を紹介する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0716/pub/


07/30 (木曜) 13:30 - 15:30   吉田 健悟

タイトル:

JEM-GLIMS 及び TARANIS 衛星に搭載するフォトメータの開発

要旨:

高高度放電発光現象 ( スプライト、エルブス、ブルージェットなど ) は雷雲上空で発生する過渡的現象である。1989 年のスプライトの発見 以来、精力的な観測と理論的研究がなされ、その発生メカニズムなど が明らかになってきた。とりわけ、多くのスプライトの発生メカニズ ムを説明できる理論として準静電場モデルが登場した。しかし、準静 電場モデルだけでは説明できない観測事例も存在する。例えば、スプ ライトの発生原因である親雷放電から、スプライトが最大で 50 km 程 度離れて発生するなどである。

これらの問題を解決する手段として、宇宙からのスプライト観測ミッ ションが進行中である。北大では、国際宇宙ステーションからの観測 ミッションである JEM-GLIMS ミッションとフランスの小型衛星ミッシ ョンの TARANIS ミッションに参加しており、これらに搭載するフォト メータを担当している。現在、フォトメータは試作モデルが完成して おり、それを用いて性能評価試験を行なっている。本発表では、スプ ライトの諸問題と、ミッションの説明をふまえ、フォトメータの開発 について発表する。

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0730/pub


10/22 (木曜) 13:30 - 15:30   佐々木 洋平

タイトル:

回転球殻MHDダイナモにおける力学的境界条件の影響

要旨:

近年の計算機能力の向上により, 天体固有磁場の生成維持機構を調 べることを目指した三次元回転球殻内の磁気流体力学的ダイナモ計算が 行われるようになった. しかしながら, これらの数値計算で扱えるパラ メータは現実の天体での値とは数桁も異なっており, 計算結果が直接的 に天体の固有磁場および内部の運動を表現できているか定かでない. そ のため, 実際の天体や惑星の磁場を計算機上で模倣することを目指すシ ミュレーション研究と平行して, 現状の計算機で得られる範囲での解の 力学的構造を理解することが, 観測される天体固有磁場の生成維持機構 についての洞察を深めることにとって有益であると思われる.

ダイナモ作用への影響が明らかになっていない物理設定の一つに力学的 境界条件が上げられる. これまでの多くのダイナモ計算では, 地球型惑 星を念頭に力学的境界条件として滑り無し条件を用いている. その一方 で, 滑り無し条件では境界層における粘性散逸を過大評価してしまう, という理由から, 力学的境界条件として応力無し条件を用いるべきであ るという主張もある. また恒星やガス惑星におけるダイナモ作用を考察 する場合には, 力学境界条件としては応力無し条件が適切かもしれない.

磁場の生成維持が力学的境界条件にどのように依存するかを系統的に調 べた研究は少なく, 幾つかの研究においては定性的な考察が行なわれた だけである. 力学的境界条件の違いが磁場の生成維持にどの様に影響を 与えるのかは明らかにされていない. 本発表では力学的境界条件として 上端に応力無し条件, 下端に滑り無し条件を課した三次元回転球殻 MHD ダイナモのパラメータ研究について報告する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/1022/pub


10/29 (木曜) 13:30 - 15:30   吉田 健悟

タイトル:

JEM-GLIMS & TARANIS 衛星搭載フォトメータの開発

要旨:

高高度放電発光現象 ( スプライト、エルブス、ブルージェットなど )は 雷雲上空で発生する過渡的放電現象である。スプライトの発生メカニズムを 説明する最も信頼されている理論として準静電場モデルがある。 しかし、スプライトの発生原因である親雷放電から、スプライトが最大で 50 km 程度離れて発生するなど、準静電場モデルだけでは説明できない 観測事例も確認されており、スプライトの発生条件が未解明のままである。

これらの問題を解決する手段として、宇宙からスプライトを観測する ミッションが進行中である。北大スプライトグループでは、 国際宇宙ステーションからの観測ミッションである JEM-GLIMS ミッション、 及びフランスの小型衛星の TARANIS ミッションに参加しており、 これらに搭載するフォトメータの開発を担当しており、フォトメータの 性能評価試験を行なっている。本発表では、スプライトの発生メカニズム の問題点と、観測ミッション概要、及びフォトメータの開発について発表する。

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/1029/pub


10/29 (木曜) 13:30 - 15:30   徳永 義哉

タイトル:

木星大気を想定した放射対流平衡モデル

要旨:

星の大気は厚い雲に覆われその雲の生成要因など大気の対流運動についてわかっていないことが多い. 大気の対流運動には放射が大きく関わっており, 放射過程を明らかにすることが対流運動を解き明かす重要な要素である.

そのため, 木星の大気の放射過程について調べるために, 木星大気にあてはめられる放射対流平衡モデルを作成した. このモデルでは純粋な水素大気のみでの計算を行った. そのため, 現実の木星大気とは条件が明らかに異なるが, 水素を主成分とする木星の放射特性を理解するのに 役立つと思われる.

この一次元の放射計算により, 木星大気の対流圏と成層圏に おける放射対流平衡状態の温度構造を得られた. その結果, 外部からのエネルギーの流入がない場合に放射冷却が おこり,光学的厚さがより小さい高度(< 40000 Pa)で大気が 成層状態になることがわかった.

今回は, 具体的な計算手法なども交えてモデルの概要を 発表する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/1210/pub


12/17 (木曜) 13:30- 15:30   岩堀 智子

タイトル:

水星の表面温度分布

要旨:

水星の熱史計算の境界条件には平均表面温度 440 K という値が 用いられることが多いが、これは水星表面が全球にわたって一様 な温度であるとして見積もられた平衡温度である。しかし、実際 の水星では、大気がなく、自転周期が長いことから、夜側ー昼側 間や緯度方向の表面温度の差が大きい。したがって、平均値はこ の温度からずれることが推測される。

水星の表面温度についてはすでに多くの先行研究があるが、表面 温度の局所的な時間変化と物性値の関連付けに着目したものが多 く、長い時間スケールでの惑星全体の熱進化という観点では研究 されてこなかった。

そこで本研究では、先行研究 Yan et al.2006 と同様の計算を行 い、熱進化の境界条件としての表面温度について検討した。放射 の効果により、表面温度を単純に時間平均した値と、表層数 m 以下の日変化しない層の温度は異なる。水星内部の温度構造に影 響するのは後者であると考えられるので、深さ 10 m のにおける 温度分布を求めたところ、緯度方向に 200~300 K 程度の温度差 があることがわかった。

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/1217/pub/


01/14 (木曜) 13:00 - 15:00   山下 達也

タイトル:

主成分凝結を考慮した火星大気対流の 2 次元数値実験

要旨:

火星大気中では主成分である CO2 が凝結し, 氷雲を形成する. 現在 の火星極域では対流性の CO2 氷雲が形成されると考えられている (Colaprete et al., 2003). また過去の火星では CO2 氷雲の散乱温 室効果によって, 温暖湿潤な気候が維持されていたと考えられてい る(光田, 2007 など). 以上の問題を議論するには, 放射によって駆 動される主成分凝結対流の構造を注意深く調べる必要があると考え られる.

主成分が凝結する系では, 熱力学的変数に関する自由度が 1 つ減る. その結果, 上昇域と下降域の温度差が生じなくなり, 気塊は浮力を得 られない. しかし, 過飽和が許容されるとすれば, 上昇域と下降域の 温度が生じ, 気塊は浮力を得られるようになると考えられる. 実際の 火星大気では高い過飽和度が実現されうることが観測により確認され ている(Hinson and Wilson, 2002 など). 火星大気中の主成分凝結対 流を考える上で, 過飽和は重要なファクターの 1 つとなりうると考 えられる.

主成分凝結対流に関する先行研究としては Colaprete et al.(2003) による 1 次元雲モデルを用いたシミュレーションが挙げられる. こ のモデルでは対流がパラメータ化されている為, 対流の循環構造や雲 分布を議論することが出来ない. そこで自分並びに地球流体電脳倶楽 部のメンバーは, これまで主成分凝結対流の直接計算を目的として 2 次元非静力学モデルを開発してきた. 最近になってようやく統計的平 衡状態が得られるほど十分長い時間積分が出来るようになった. そこ で今回は臨界飽和比(凝結が生じる際の飽和蒸気圧に対する圧力の比) と放射冷却率をパラメータとする計算の結果(平衡状態とそれに至る までの時間発展)について報告し, 今後の計算課題について述べるこ ととしたい.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0114/pub


02/18 (木曜) 09:00 - 11:00   堺 正太朗

タイトル:

カッシーニによる土星内部磁気圏のイオン観測とモデリング

要旨:

土星内部磁気圏はディスク状の, 濃くて冷たいプラズマから構成されている. このプラズマは, 土星近傍に存在する衛星やリングを起源としており (Moncuquet et al., 2005; Persoon et al., 2005; Wahlund et al., 2005; Sittler et al., 2006), 土星磁気圏を広く満たしている. その中でも, 衛星エンセラダスはその南極から大量の水を噴出していることがカッシーニによって確認されており (Porco et al., 2006), 土星磁気圏プラズマの主要な起源の一つと考えられている.

最近の Cassini/RPWS (Radio and Plasma Wave Science) の観測から, 微小な荷電ダスト粒子が多く存在する土星 E リングでは低エネルギー (数eV) イオン速度が共回転速度よりずっと遅く, むしろケプラー速度に近いことが明らかになった. この事は, 荷電ダストとプラズマの相互作用 (ダスティプラズマ) の存在を示唆している (Wahlund et al., 2009).

我々は, RPWS/LP (Langmuir Probe) のデータを用いて, 土星内部磁気圏 (3 - 11 Rs) における低エネルギーイオン速度の統計的な解析を行った結果, 土星からの距離に比例したイオン速度のトレンドが得られ, イオン速度は共回転速度よりも 50% 以上遅いことが明らかになった. また我々は現在, イオン速度のモデリングを行っている. モデルはイオン, 電子, ダストの 3 流体 MHD 方程式を用いている. 今回はその計算の途中経過についても併せて発表する.

発表資料:

02/18 (木曜) 09:00 - 11:00   武 直樹

タイトル:

ステレオトラッキングによる金星雲高度の推定

要旨:

金星探査機による紫外画像に写った雲の模様を追跡することにより, 風速を求める研究は広く行われてきた. これらの研究の多くは金星を比較的遠くから写した画像を用い, 雲の高度としてある一定値を仮定した上で全球的な流れを導くことを目的としていたため, 個々の雲の高さとメソスケールの流れの様子についてはわかっていなかった. また, 平均的な雲の高度に関しては Venus Express 搭載の VIRTIS カメラにより, 紫外光で見える雲頂高度は低中緯度で約72kmであり, 極付近では約64kmに減少することがわかってきたが, メソスケール雲の凹凸に関してはわかっていない. 本研究では, 個々の雲の高さとメソスケールの風速を求める方法として, 複数の画像を用いたステレオマッチングの可能性を検討している. 本発表では Venus Express / VMC による画像を用いた解析結果を示し, その精度について模擬画像を作成することによって議論する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dmsemi/2009/0218/2/pub


最終更新日: 2010/02/18 堺 正太朗