ページ記述言語 "Postscript"

これから紹介する Postscript は「ページ記述言語」の一つです. ページ記述言語とは,簡単にいえば,ページプリンタ(いわゆるレーザープリン ターのように,ページ単位で紙を出力するプリンタ)のイメージを作成するため の制御コードです.普通は単純に文字を出力する機能の他に,図形の作画機能も 持っています.Postscript 以外の例としては,C社の LIPS,E社の ECS/Page,H社 の HP-PCL などがあります.

なぜ Postscript ?

ページ記述言語には Postscript 以外にも LIPS や ECS/Page などがあるのに, なぜここで敢えて Postscript を取り上げるのでしょうか ?

デバイスに依存しないグラフィック能力を持つ

Postscript は普通 ASCII文字 で記述され,出力装置の物理的なスペック (解像度や紙送りマージン)に依存せずにページを記述することが可能にな っています.DTP(Desktop Publishing) では,解像度の違う画像を同じページ に貼り付けたり,校正用の出力に廉価なプリンタを使い,最終的に 製版用フィルムに出力するというふうに出力装置を変更する必要があるので, この特徴は重要です.

汎用プログラム言語である

Postscript はページ記述言語であると同時に,汎用のプログラム言語でも あります.ただし,そのコーディングスタイルは逆ポーランド記法と呼ばれる クセのあるスタイルですが,能力的にはBasicやCといった言語と遜色ありません. (僕は昔,連立方程式を解く Postscript を書いたことがあります) プログラム言語なので,「A というフォントがプリンタになければ, B というフォントを使う」といった,より device independent な処理が できるようになります.

文書・図形・写真などのデータを統一的に扱うことができる

Postscript では「パス(path)」と呼ばれる曲線を定義して,その内側を塗り潰 すことにより図形を作画します.文字も同様に,文字の輪郭線をパスと見なして 塗り潰すという作業を行っています.また,ラスターイメージも同様に扱うこと ができます.

ページ記述から電子出版へ

数年前からOA現場におけるペーパーレス化が提唱され,また, 某国の首相もIT革命という言葉を喋るこの時代,紙に出力することを 前提としたページ記述言語はどうなるのでしょうか? そのような背景から,ページ記述言語は,紙に印刷するためだけではなく, 画面に簡単に表示したり,ハイパーリンクを埋め込めたりでき,かつネット ワーク上で配信しやすい形であることが必要とされました. 現在そのような目的で普及している形式にPDF(Portable Document Format) があります.

PDF を使えば画像やイメージが混在した文章を,商用印刷レベルの品質を 保ったまま,デバイスに依存することなくオンラインで配信できます. 実は,この PDF の元となる言語が Postscript なのです.これらの特徴 から,Postscript が注目され,現在 DTP の世界ではデファクトスタンダード となるに至りました.


前坂たけし(msaka@ep.sci.hokudai.ac.jp)