今年度の IP meeting の話題は以下の通りであった.
今年の IP meeting の大きな特徴は, 今年 1 年を振り返る意味で キーノートスピーチがなされたことである. その分, 紹介される 話題数は減ってしまっているが, 昨年よりも活気に満ちた会合になっていた.
以下では, それぞれの話題の簡単な紹介を行う.
キーノートスピーチでは, 今年 1 年間でインターネットを取り巻く環境が どのように変化したかについて語られた. 主な話題は,
- IT 基本法の成立
インターネットを用いた情報整備が法律でうたわれるようになった. 「インターネット」という言葉が注釈無しで使われており, その意味でも画期的.- DNS オペレーションの話し
世界に 13 台存在する DNS の root サーバの管理を誰が行うかが 問題となったそうだ. 日本にも 1 台存在するが, これの管理を国が 行う方が良いのでは, という議論がおきたそうだ.
技術が先攻し,- JP ドメイン管理体制の変革
昨年から今年までの変化として一番大きなことは, インターネットが社会基盤として認知され, 社会的な関心や社会的な責任が 大きくなってきた, ということにあるようだ. 講演者の村井さんが強調していたが, インターネットの発達は技術が 先行しそれを社会が認知することで成り立って来ている.
複数のパネリストが, これまでのインターネットの発達とこれからの 期待を語った.
JPNIC からの報告では, 主に JP ドメイン管理体制の変革の話しがなされた. 今までは JP ドメインの管理全てを JPNIC が行って来たが, それを以下のように 変更したそうだ.
- レジストリ・レジストラ制度の導入
- レジストリとしての JPRS を設立
- JP ドメインのデータベースを管理
- ICANN (世界の DNS の元締め)と ccTLD (country code Top Level Domain) スポンサー契約を結ぶ.
- レジストラとして民間の登録代行業者の参入.
- JP ドメインの登録代行
- 公共的な部分(紛争解決)は JPNIC が担当.
- レジストリの監視
- 紛争処理方針として JP-DRP を導入.
IPv6 最新動向では, この 1 年での IPv6 関連の動きがまとめられた. IPv6 は日本が積極的にリードしている部分である. IPv6 のアドレスポリシーに対して日本から 積極的に提言がなされているようだ. アジア, ヨーロッパでは各国, 各企業が IPv6 化への取り組みを進め, 実際に運用実験も始まっているそうだ.
JPCERT からの報告では, まず始めに JPCERT の位置付け(情報センター, 問題解決のサポート)と JPCERT の活動内容が紹介された. その後, この 1 年のインシデントの傾向が語られた.
最近の傾向としては, 弱点探査としてのポートスキャン・プローブは当然として, 知られているありとあらゆる不正アクセスがなされているそうだ. 不正アクセスの初期段階としてポートスキャンが用いられることから, きちんとログを解析しポートスキャンを監視することの重要性が語られた.
この 1 年は Nimda, Code Red といった新種の狂悪なワームが猛威を 奮った. Nimda 等は感染した PC からいたるところへ DDoS 攻撃を行い, サーバ停止, ルーティングのリソース消費, 回線をパケットで埋め尽くすことを引き起こした. それらの経験から, ブロードバンド時代の DDoS 攻撃の持つ 脅威について語られた. ブロードバンド時代は常時接続・数 MB の帯域は当り前になので, エンドユーザでも簡単に帯域を潰すことが可能になる.
ドメイン名最新動向では以下の内容が語られた.
- gTLD(global Top Level Domain)の動向
- ICANN (1998 〜) の歴史的背景
- NSI (現 veriSign) の com, net, org 独占状態の解消
- ドメイン名紛争処理解決の仕組みを策定. ICANN UDRP
- 新 gTLD の承認 (2000/11)
- info, biz (レジストリ間の競争を)
- name, museum, aero, coop, pro (実験的意味あい)
- ドメイン名紛争処理解決 ICANN UDRP
- ミニマムアプローチが原則. 明らかに不正な場合のみ裁定.
- 裁定に不満な場合は裁判に.
- ccTLD の動向
- JP, AU(オーストラリア)のレジストリが ICANN と ccTLD スポンサー契約.
- JP ドメインの動向
- 汎用 JP ドメインの導入
- JP ドメインのドメイン名紛争処理状況
- 2000/10/19 - 2001/11/27, 申し立て件数 13 件.
- オルタネートルート問題
- 会社によって, 独自のルートサーバを立ち上げ, 独自の TLD を設定
→ 常に問題視されていたが, ICANN の biz ドメインと抵触してさらに問題に.- ICANN による声明. 「DNS における唯一の権威あるルート(root) の必要性について」