2002年12月19日に Internet Week 2002 で行われた「インターネット上の法律勉強会」で聞いてきた内容についての報告。
ここに書かれたことについては間違い等を含んでいる可能性を否定できない。
間違いはすべて筆者(小松)の不注意、不勉強からくるものであるが
これによって生じるいかなる問題に対しても筆者は責任を負い兼ねる。
(2003/01/06 小松 研吾)
ネットワーク上での画像や動画の取り扱い等に関して具体的な例をあげて、関係する法律とその解釈について解説。
肖像権侵害事例
- Y がカメラマン X1 に無断で X1 の撮影したタレント X2 の写真集
掲載写真をスキャナーでスキャンしてウェブ上で公開した場合の法律関係は?
法的権利
X1: 複製権・公衆送信権・送信可能化権・氏名表示権
X2: パブリシティ権
- Y がカメラマン X1 が撮影したタレント X2 の写真集掲載写真
顔面部分のみをスキャニングして他のヌード写真と合成し、
ウェブ上で公開した場合の法律関係は?
親友と交換しあうだけだったらどうか?
法的権利
前段
X1: 複製権・翻案権・公衆送信権・送信可能化権・同一性保持権
X2: 肖像権・パブリシティ権
後段
X1: 同一性保持権
X2: 肖像権(?)
- Y が放送局 X3 の放映したテレビドラマに出演している
タレント X2 出演シーンを加工し、アダルトビデオと合成して
ウェブ上で公開した場合の法律関係は?
法的権利
X2: 肖像権・パブリシティ権・同一性保持権・氏名表示権
X3: 複製権・送信可能化権
肖像主体の権利
- 肖像権:
事故の肖像の公開範囲を自ら決定することのできる権利。
これを侵害すると民事上はプライバシー権または名誉毀損の不法行為。
刑事上は名誉毀損罪として争うことができる。
- パブリシティ権:
有名人の氏名や肖像などが顧客誘引力を持つ場合に認められる当該財産的価値についての排他的支配権、処分権。
これを侵害すると民事上の不法行為を構成し得るが、
刑事上はそれが名誉毀損の程度に至るような特段の場合でない限りは処罰されないだろう。(法律上規定がない)
肖像を利用する側の権利
- 著作者の権利
- 著作権(著作財産権)
侵害した場合、損害賠償請求の対象となる。
- 複製権
著作物は個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を
目的とするときは以下の場合を除き、その使用する者が複製することができる。
1 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合。
2 技術的保護手段の回避により可能となり、またはその結果に障害が生じないようになった複製を、
その事実を知りながら行う場合。
(つまり、コピープロテクトを意図的に解除した場合)
- 公衆送信権
公衆送信とは公衆によって直接受信されることを目的として無線通信
または有線電気通信の送信を行うことをいう。
- 送信可能化権
送信可能化とはつまり著作物をサーバーなどに置き、インターネット等に接続して
誰もが自由に取り出すことができる状態にすること。
(オンデマンド送信への保護)
- 著作者人格権
侵害した場合、慰謝料請求の対象となる。
- 公表権
著作者はその著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)
を公衆に提供しまたは提示する権利を有する。
当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても同様とする。
- 氏名表示権
著作者はその著作物の原作品にまたはその著作物の公衆への提供、提示に際し、
その実名もしくは変名を著作名として表示し、または著作者名を表示しないこととする
権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供、提示に際しての
原著作物の著作者名の表示についても同様とする。
- 同一性保持権
著作者はその著作物およびその題号の同一性を保持する権利を有し、
その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
- 著作隣接者の権利
- 著作隣接権(財産権)
- 複製権
実演家、レコード製作者のみならず、
放送事業者および有線放送事業者にも送信可能化権が認められた。(平成 14 年著作権法改正)
放送事業者および有線放送事業者は放送を受信してこれを送信可能化する権利を有する。
- 実演家人格権
公表権は保証されない。
特定商取引法による対応の流れ
「電子メールによる一方的な商業広告の送りつけ問題」について、2002年1月に特定商取引法施行規則(省令)改正を行い、
さらに、2002年4月、特定商取引法を改正した。
- 省令改正のポイント
- 通信販売事業者等の電子メールアドレスを表示。
- メールの表題部に「!広告!」と表示。
- 消費者が広告メールの受け取りを希望しない旨を、事業者に対して連絡するための方法を表示。
ただし、その連絡方法を設定しない場合には表題部に「!連絡方法無!」と表示。
- 法律改正のポイント
- 事業者の電子メールアドレスを表示
- メールの表題部に「未承諾広告※」と表示。
- 再送信禁止規定の創設に伴い、消費者が事業者に対して連絡するための方法の表示を義務づけ。
- 消費者が事業者に対して広告メールの受け取りを希望しない旨の連絡を行った場合には、
その消費者に対する広告メールの再送信を禁止する。
受信拒否の連絡のメールについて
受信拒否の通知を行う場合には、広告メール中に表示されている電子メールアドレス宛てに以下の事項を通知する。
- 受信を拒否する自己の電子メールアドレス。( from 欄への表示で可)
- 受信拒否する旨。
受信拒否の通知を行った消費者は、後日通知の有無について争いになることを避けるため、その記録を保存するようにする。
受信拒否の通知にあたり、住所、氏名、年齢、電話番号等の個人情報を併せて通知することを求められる場合があるが、
「受信を拒否する電子メールアドレス」および「受信を拒否する旨」以外は
いっさい伝える必要はない。
そのような個人情報を不用意に提供することは、更にトラブルを招く可能性があるので控えるようにする。
情報提供について
(財)日本産業協会において、再送信禁止義務違反に係る情報提供をうけつけている。
- 申し出方法
再送信禁止義務違反のメールに係る情報提供の際には、以下の 3 つを併せて送る必要がある。
- 消費者が最初に受け取った広告メールの内容の記録
- それに対して受信拒否をする旨を伝えたメールの内容の記録
- 受信拒否する旨を伝えたのと同一の事業者から再度送られて来た広告メールの内容
携帯電話では上記の情報すべてを併せて送ることは現時点で不可能であるため、
パソコン、FAXまたは郵便によって提供する。
- 宛先
際送信禁止義務違反メール受け付け用電子メールアドレス: mailagain@nissankyo.jp
郵送先: 〒105-0001 東京都港区虎ノ門2-5-21 寿ビル5階(財)日本産業協会
FAX番号: 03-5298-1584
電話番号: 03-3501-3344
詳細については(財)日本産業協会のホームページ参照。(http://www.nissankyo.jp/)
このプログラムの最後にはパネルディスカッションがおこなわれた。
そこで議論されたことがらについていくつか記す。
- 利用者がプロバイダ等事業者に送る、迷惑メールに関する苦情等のメールへの対応が事業者への大きな負担になっている。
(「迷惑メールやめてくれの迷惑メール」)
- 広告業界はイメージが命だが、正当な広告(スパムではない広告)に対しても「未承諾広告※」ではイメージダウンである。
(正当と不当が同じ件名としなければならないことに疑問)
- 以前は正当と不当が区別されていなかったが、法律によって区別されつつある。
- オプトアウト(再送信拒否通知)を行うと逆効果を招くこともある。
(法律が助長(?))
等の議論がなされた。
これら議論の中から以下のことが重要であることがわかる。