なぜ情報実験か?

Unix (Linux) / Internet の歴史と
学問の情報化への展開を踏まえて

北海道大学理学研究科
地球惑星科学専攻
林 祥介

2000 年 10 月 6 日


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内容




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計算機のイメージの変遷

昔の計算機

計算機は, 計算機(計算するための機械)

多くの日本人にとっての 1980 年過ぎごろ
あたりまで現実

巨人 IBM に追い付くべく各電器会社への,
より早くより大きな計算が可能となる計算機
(IBM 型大型計算機 = main frame) に向けた植産興業政策が続けられていた


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計算機のイメージの変遷: 「ワープロ」

しかし, 米国では計算機は「ワープロ」(いまや古語か?)として進化しつつあった

「ワープロ」
プログラム開発環境とプログラムのドキュメンテーション環境
文字処理を中心とした情報処理の必要
これすなわちワープロに他ならない

日本でも進化させようとしていただろうけれど私はよく知ら
ない. 1980 年代に入って世にでる日本語ワープロの素地
はこのあたりに当然あるに違いない.

Unix は 1969 年に発明され開発が始まった計算機を動かすための基本ソフトウェア (OS = Operating System) であるが, その骨子は一言でいえば「ワープロ」ソフトウェアであることにある

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計算機のイメージの変遷: Unix

Unix は先端的な情報科学研究用環境として進化した

情報科学研究者フレンドリー

Bell 研で作られたのにソースコードが公開されていた(画期的)
自分に都合よく改編可能
情報科学科でのテキストとしてソースコードが利用され広まる

開発の幸せなフィードバック(Linux へ続くフリーウェア文化の下地)
使う人がソフトウェアを作る人でもあった (/usr)
それぞれがそれぞれの必要からソフトウェアを開発ただで提供
お互いに資源を出し合い, 使いあい, 鍛えあう
たくさんの人が使うので鍛えられる
便利になるので使う人が増え, 作る人も増える
・・・


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計算機のイメージの変遷: Unix

Unix は一般科学者の研究用環境にも広まった

便利だった

プログラム開発環境とドキュメント処理機能がそろっていた

Unix は米国の情報科学以外の研究者でもその研究環境の基盤になった.


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計算機のイメージの変遷: Unix

米国の諸々の活動のスポンサーは軍

日本では諸官庁によるそれぞれの担当分野の産業育成政策とくに通産省が有名

ソースコードが公開されていることは, 軍にとってもいいこと
特定の企業に「情報」が支配されるのは喜ばしくない

軍が巨大スポンサー, 核戦略・防衛兵器用基礎研究
国防総省 ARPA (Advanced Research Projects Agency,
今はDARPA に変わった)

大学が研究中心
カリフォルニア大学バークレー校など
1980 年代:
バークレー版 Unix (BSD Unix) = みんなが使う標準 OS
Bell 研究所版 (System V 系 Unix) = 計算機メーカーが使う OS


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計算機のイメージの変遷: DEC


cf. DEC と Unix

計算機としてのハードウェアに定評があり, プログラム
環境, 通信環境などが立派で米国の研究者に支持されて
いた機械は DEC 社の VAX とその添付 OS の VMS であっ
た. DECnet という DEC の機器をつなげるプロトコルを
使ったネットワークが高エネルギー物理学や天文学の領
域では使われてきた.

ところが, Unix が広まるとハードは DEC で OS は Unix
という形になっ ていったところが多い. 特に 1980 年代
中ごろ internet (TCP/IP) を装備した BSD 4.3 に なっ
てからは研究教育領域では急速に VAX/VMS は駆逐され
VAX/ULTRIX (BSD Unix をベースにした DEC 版 Unix) に置
き換わってしまった.

・・・

そして 90 年代にはいって AT 互換機/MS 帝国の侵攻とと
もにあの DEC も compaq になってしまった. (Unix も Linux
になってしまった)


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計算機のイメージの変遷: ARPAnet

米国では計算機は「通信機」としても進化しつつあった

日本でも進化させようとしていただろうけれどよく知らない
(大型計算機をつなぐプロジェクト N1net ってのがあったなぁ).

ARPAnet (Internet の始祖)はそのような研究の一つ.
60 年代終りから核戦争を想定した防衛システム基礎研究
として国防総省 ARPA キモイリで行なわれたものである.

中心のないシステム, 分散統合
どこのホストコンピュータが蒸発してもどこかのコンピュータが生き残り,
ネットワーク全体として機能が維持される

ARPAnet はパケット通信で結ばれたコンピュータネットワーク
であり, その上のいくつかの計算機が
TCP/IP = Transmission Control Protocol / Internet Protocol
というプロトコルで会話を行なうようになった.

カリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学は
その研究中心の一つ (SUN = Stanford University Network)


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計算機のイメージの変遷: Unix+ARPAnet(Internet)の結合と普及

「ワープロ」である Unix が「通信機」になったのはその初期から
で ある (uucp = Unix to Unix CoPy) が,

国防総省 ARPA がその国防用の OS を BSD Unix に選んだので Unix と ARPAnet の諸々の技術が結合, TCP/IP (Internet) は研究教育業界での通信プロトコルの事実上の標準 (Defuct Standard)

1980 年, バークレー版 Unix (BSD Unix) が TCP/IP を実装したので,
TCP/IP は Unix を使っているほとんどすべてのマシンに
に一挙に広まった.

Unix は研究機関高等教育機関現場ですでにある程度ひろまっていたので
TCP/IP も通信プロトコルの事実上の標準(Defuct Standard)
になってしまったわけである.


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計算機のイメージの変遷: X

ビットマップディスプレー = ウィンドウシステム
BSD 版 Unix が布教された大きな要因は
Unix がワープロであった
internet という通信手段を実装
X ウィンドウシステム
今でこそ Mac や Windows で当たり前の
ビットマップディスプレー制御システムを
装備

X の特色
ディスプレー, マウス, キーボードなどの端末 I/O を支配するサーバ

それまでの英数字のみをあつかうディスプレーから絵を(当然
漢字も)同時にあつかえるディスプレーに進化した

通信手段 (internet) を組合せ, ネットワーク上に分散して存
在している資源の表示出力を一つの画面上で同時に扱えるよ
うにした. そこで活躍している技術の一つがサーバー・クライアント方式 である.

Unix と internet の結合は, サーバー・クライアント型の環境とよく言
われるが, それをもっとも視覚的に体現してくれるのが X である.



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計算機のイメージの変遷

昨今の計算情報環境の基礎は


に集約されている.

パソコンの OS (MacOS や Windows)は Unix 上で開発
された諸技術を採り入れて進化してきた.
Mac や Windows を使う際にで食わす基礎的な技術用語
の多くは Unix / internet / X に端を発しており,
これらを勉強してないとよくわからん, ということになる
ことがすくなくない.


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日本では: メインフレーム・スパコン路線

大企業的産業育成政策 = 目指せ IBM

通産省キモイリ, 文部省全面協力(大学の利用者がバグ
出しをする)で計算をするための計算機を一所懸命作った
(日立・富士通共同開発 M シリーズなど)

数値計算用または経理処理用の大型汎用機やスパコンは
80 年代中盤には世界をリード, いまや, ほとんど日本製

逆に

数値計算のためではない情報処理装置としての計算機の
開発が大幅に遅れ 1990 年代に至る

そもそも「計算機」を作るので手いっぱいだった
(汎用の情報通信機器への進化にまで手が回らない)

スパコンを作る上では大学は受身の実験台として機能した
大型計算機センターでの実装実験・デバッグ


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日本では: ゲーム・ワープロ・パソコン路線

計算機が日本語を実用レベルで喋れるようになったのは 1981 年
文字通りのワープロから出発
研究現場ではなく逆に事務現場から

日本のパソコン
漢字を表示すること + ゲームで使えること
最初からカラービットマップディスプレーが当り前(画期的)
NEC PC98 シリーズ + 一太郎 (日本語と英語の壁)


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日本では: 日本の大学

計算機は計算機
現場(研究室等)で計算機を持てるなんてのは夢のまた夢
計算といえば, 実験制御用計算機を除けば
大型計算機センターに出かけるのが普通

Unix ははやらなかった
Unix は 英語しかしゃべれなかった
Unix が走るマシン(DEC の機器)は高価だった

などなどの理由で X ができるまで
Unix は情報系以外の人々が使うことはほぼなかった

Unix が輸入されたのは結構古くて 1977 年ごろ 東大和田研

計算機は清書道具
そうこうしているうちにワープロ・パソコン時代へ

Unix が広まるのは X によって日本語が表示できるようになった 1980 年代おわり


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日本では: ゲーム・ワープロ・パソコン路線の弊害

メーカーによるパソコン開発の「弊害」
大学が計算機科学・情報科学の触媒としてあまり機能しない

ソフトウェアの公開, 自由な開発改編なんてありえない

皆が使うからそれがより発展するという進化,
がうまくおこらなかったようである.

米国での進化の触媒: 大学

教育研究現場で選択された計算機が卒業生とともに流布
するという適応放散

プロジェクトの中心としての大学
Unix → UCB
X → MIT


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日本では: ゲーム・ワープロ・パソコン路線の弊害

メーカーによるパソコン開発の「弊害」
各分野での情報化の遅れ

情報かって何? 清書すること? かしこい電卓?

計算機科学・情報科学が何を目指しているのか
自然な進化の方向が周辺分野に伝わらない

1980 年代,
計算機が日本語をしゃべれるようになるまで時間がかかりすぎた.

計算をする機械, せいぜい清書する機械以外に
計算機のご利益がわからなかったのである.
Unix に対応する何かが日本では登場できなかった.
(TRON,坂村健というのはある.)

触媒の表の機能 = 情報科学的「製品」の進歩
触媒の裏の機能 = 情報科学パラダイムの周辺への伝搬

Intenet 爆発 and/or Windows95 の登場を待たねばならなかった


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計算機科学・情報科学: 1990 年代の爆発

1990 年代の爆発 = ダウンサイジングと Intenet

Windows と AT 互換機 (MS-Intel 帝国)

インターネットの民営化 (ISP, 日本では 1992)
村井純 WIDE プロジェクト (1988)
TISN (東大国際理学ネットワーク) (1989)
SINET (まともになったのは 1992?)

WWW (サーバ)と ブラウザ(クライアント) の発明
CERN -> Apache
NCSA mosaic -> Netscape
WWW = W3 = World Wide Web
html = hypertext markup language
URL = Uniform Resource Locator (プロトコル://アドレス/ファイルパス名)
http = hypertext transfer protocol

(Unix → Linux)


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計算機科学・情報科学: Bush (1945) の実践.

今ようやく情報科学がやろうとしてきたことたちが見えてきた.
= 計算機に知識を教えて行くこと.

今日的計算機: Bush (1945) の実践.

人類にとっての真の挑戦は原子をさらに細かく調べたり
生命の複雑さを探求したりすることではなく,
科学技術が氾濫させる情報のよりよい管理方法を発見することだ.

人間の知識と経験が驚異的な速度で増大しているというのに,
必要な情報を捜し出す方法が以前として「帆船時代」のままなのはおかしい,
情報を整理する新しい方法と技術が必要である.

MITの副学長, 大戦中は国防研究委員会議長, レーダーから対潜水艦作戦, さ
らにマンハッタン計画にいたるまでの兵器開発計画の監督.


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計算機科学・情報科学: Bush (1945) の実践

それぞれの知識分野がそれぞれに情報化し, 知識をネットワーク化した計算機に教えこんでいく必要がある.
新しい知見をえることだけが仕事なのではなく,
知見をどう掌握するか考えることも仕事.

知の爆発への対応


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計算機科学・情報科学: Bush (1945) の実践

Bush (1945)「メメックス」(memex)

関連がある異種の情報を一つに結び付ける装置で,
これにより, 誰もが自分専用の情報を整理蓄積できるようになる.

弁護士はボタンを押すだけで, 彼自身の経験ばかりでなく
友人や関係当局の経験から得られた関連意見や決定を呼び出せる.
弁理士も依頼人の希望に応じて, 数百万件もの特許を即座に調べることができる.
医師も診断に迷った場合には類似した症例を手早く調べたうえ,
ついでに解剖学や組織学などの書物まで参考に引くことができる.
膨大な記録を整理して誰もが活用できるようにすることによろこびを見いだす,
先駆的な新しい職業も生まれてくるだろう.



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計算機科学・情報科学: 今日的計算機のイメージ

インターネットで結合された計算機群によって構成される


情報処理装置というが単に清書装置としてしか使われていないことが多い.
通信装置というが, 文字通り通信装置としか使われていないことが多い.

情報生産者側(インターネットを介して情報供給する)の立場にたって
いないからである. たんなる利用者.


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計算機科学・情報科学: 諸分野での展開 SOI

ネットワーク上での知識提供実験 / ネットワーク上での教育実験

参考: School of Internet (WIDE) (http://www.soi.wide.ad.jp/)

地球惑星業界でも同様な試みを展開する必要


例 (宣伝) : データの構造化, 知見プラットフォームへの試み

参考: 地球流体電脳倶楽部 (http://www.gfd-dennou.org/)

地球惑星(流体現象)にかかわる諸々の知見をネットワーク上にためる
そのための道具作りをおこなう
知見データの構造自体を考える


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計算機科学・情報科学: 身の回りの今日的計算機

サーバーは Unix/Linux
個人環境は PC (Windows, Mac /Linux)

個人利用というと Windows や Mac であるが
ソフトウェア資源のサーバー・クライアトの分離が不十分な
のでネットワーク上の分散した資源を使いこなす情報処理装置
としては少し使い勝手が悪い.

数値計算を日常的に行う人々をはじめとして個人環境も Linux で動かしている研究者は少なくない.

WWW の発明にともなうブラウザ文化は インターネットを爆発
させてしまった. が情報提供装置 (http サーバー) としては
Unix/Linux が使われていることが多い.

数値計算などの計算サーバーは Unix/Linux が多い.

現在でもネットワークを介した情報処理ソフトウェア道
具の研究開発は Unix/Linux 上で行なわれていることが少なくない.

サーバーを維持する人は Unix/Linux が必要
(Windows 2000 は使えるか?).



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フリーウェアな伝統:

Internet 最低限知識

LAN (local area network)
計算機相互間のデータ通信を可能にした接続一般のことをいう.

Protocol
データ通信をおこなうための, データ信号の流し方, 格納方法等々に関する取り決めを
通信規約(プロトコル Protocol)という.
TCP/IP, http
Netware(IPX): パソコン(DOS, Windouws)向けに開発された プロトコル体系
AppleTalk: マッキントッシュパソコンのプロトコル体系

TCP/IP (Transmission Control Protocol / Internet Protocol):
通信は情報(ビット列)を小さくちぎってパケットにしておこなう.
IP: 封筒
TCP: ながーい手紙を複数の封筒に分けて入れた便箋のページング.


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フリーウェアな伝統:

Internet 最低限知識

internet (子文字):
internet とは文字通り複数の network を相互につないだもののことであるが
(cf. 米国では高速道路網を interstate という, そのもじり),
そのうちで特に TCP/IP でつながれたネットワークの集まり, メタネットワークのことをいう.

TCP/IP 接続の特色はこのメタネットワークが
あたかも一つのネットワークのごとく利用者からは見えるところにある.

複数のネットワークが接続されてできていることを全く意識しないで良い.



(page 26)


フリーウェアな伝統:

Internet 最低限知識

Internet (大文字):
大文字の Internet はこのような TCP/IP で接続されたネットワークのうちの,
ARPAnet をルーツに持つネットワークのことをいう.

つまり Internet とは国際的な共同運営団体に加盟し,
コヒーレントにアドレス管理, 経路制御などの運営しているものたちをいう.

Internet 全体を管理運営する xx 株式会社があるわけではない.
Internet 全体に対しては IP アドレスやドメインネーム割り当てなどの管理をする
団体(NIC の集合体)が存在するだけである.


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フリーウェアな伝統:

日本における Internet の黎明: 研究実験接続の時代

Unix の世界で行われてきた計算機を通信機としてつかう実験の自然な延長として,
計算機と計算機を TCP/IP でつなぐ実験, 利用が, それぞれの必要と興味から生まれてきた.

そのまとまった研究実験プロジェクトが WIDE である.
一方必要が先行して接続を行っていったのは TISN である.

WIDE 1988 年 〜 (村井純)
Intenet それ自体を研究する目的.
大学や企業の研究室, 研究グループを会員組織とする実験プロジェクト.
多種多様な組織を繋いだ時に生じる技術的・政治的・...的諸問題を経験する実験をすること.

TISN 1989 年 〜 1996 年
東大理学部を中心として日米国際回線の共同利用のために組織された.
接続は原則として会員組織のみ.
会員は理学研究目的の組織に限定していた.

科学技術庁省際ネットワーク(IMnet)に吸収されることにより発展的に解消.


(page 28)


フリーウェアな伝統:

日本における Internet: プロバイダへ

当初は network 同士を接続すれば internet.
さらに, 自分のネットワークを他人のパケットが通過することを許容すること, つまり,

ネットワーク組織としてのボランティア

により, 総体として Internet を作っていっていた(例 WIDE, TISN).

が, ネットワークが巨大化するにつれ,
組織のネットワークに対して, ネットワークを接続するためのネットワークが分化していった.

Internet 接続サービスを提供する「組織」をプロバイダという.


(page 29)


フリーウェアな伝統:

大学・研究機関のためのプロバイダ

SINET 1991 年末,
本格的に整備されたのはこの 1994 年春あたり.

文部省による大学・研究組織間接続のための業務レベル基幹ネットワーク.

学術情報センターが管理運営. 接続は原則として, 大学を中心とする学術関係のみ.

TISN 発足のころ学情センターのネットワークは ``internet'' をサポートしていなかった.
利用者(利用組織)がその努力で TCP/IP を通すようにしていた部分はあったが.

IMnet 1995 年〜
TISN が発展したもの
科学技術庁省際ネットワーク 各省庁の研究機関を結ぶ

現在では各省庁ごとにいろいろとある?


(page 30)


フリーウェアな伝統:

個人や企業のための商用プロバイダ (ISP = Internet Service Provider)

IIJ など 1992 年末.

かくして研究とは関わりのないお仕事でも Internet に 参加できることになった.

1995 年は Internet 元年と日本では呼ばれている.
プロバイダにより, 個々人や企業などが
契約さえすれば Internet へのアクセス提供をうけられるようになった
からである.
(web と brouser の普及が大きいが)


(page 31)


フリーウェアな伝統:

Internet について: UAP (user access policy)

各ネットワークやプロバイダには利用者に対して利用の際に尊守し
なければならないルールがある.

運営のポリシー・利用の規約は, それぞれに異なっている.

イントラネット

インターネット接続された企業内ネットワークのことを
最近ではイントラネット通常外部から企業内ネットに
は入れないように設定されている(はず).

大学など教育機関での UAP は通常

教育研究目的
営利活動の禁止
...

大学の Internet の利用では末端利用者はコスト意識をほとんど持
たなくてよいようになっている場合が多い, がその構造については
(後述).


(page 32)


フリーウェアな伝統:

伝統的大前提

無保証.
自分で自分の環境を構築できる.
自分の責任において何をやっても良い.

自力更生


(page 33)


フリーウェアな伝統:

Unix はそもそも, 無保証でひろまった

何が起こっても知らんよ, そのかわり, ソースコードが(有料だけ
ど) 容易に手に入り自分で自分の環境を好きに構築できる, という
点で先進的な研究者にうけてきた.

だから US Defense でさえも BSD を採用したのである.

多くのアプリケーションソウフトウェア (X や emacs や \TeX だと
か諸々) は今だにその精神のまま作られている. 現在も活発な活動
が続いている.

さらにいえば, お互いに資源(特にソフトウェア)を提供し合い使い
込 むことにより, よりよい資源を構築していこうという精神であ
る. 結局最終的にはこの作戦の方が良いものが作られてきたという
実績があるから面白い.

Windows 2000 vs Linux


(page 34)


フリーウェアな伝統:

伝統的には, 利用者には...

「使用料を誰かに払えばおしまい」というタイプの義務が課せられ
ていることは少ない.
cf. shareware
逆に,
製作者に迷惑をかけない,
提供されたもののクレジットを勝手に変更したり,
事情を知らない人に売りとばしたりしてはいけない,
という形の義務が付されている. (cf GNU 宣言)
好きに使ってもらって,
より良い道具やアイデアが提供されることが
期待されている.
要すれば単なる利用者から一歩進んで

自発的に何らかの形で貢献するというボランティア精神

が要請されていた.


(page 35)


フリーウェアな伝統:

Internet もそのような Unix 文化の上に構築されてきている.

→ 自分のことは自分でやらなくてはならない.

いまや Internet や Unix は大勢の一般利用者が使うようになり,
数々の企業化も成功して, もはやこの精神で動いてはいないように
見えるかも知れない.

現在でも Linux やあるいは Ruby など数多くの新しい試み
をささえている活動はフリーウェアな文化の上に動いている.


(page 36)


フリーウェアな伝統:

日本の大学一般
幸か不幸か大学での活動はこのような Unix 精神と整合的であった.

大学領域の情報環境は正統派(?) Unix / Internet の精神をそのま
ま継承した環境になっていた.

大学領域は, 研究ネットワーク領域(つまりネットワークの実験場
であり, 諸々の道具や概念の生成流転, 失敗の蓄積などが期待され
ている場) としてはじまり, 格安(ただ)で諸々の資源が利用ができる.

逆に, 大学領域に住んでいる限り少なくと自分のことは自分でやら
なければならないし, 本当はそれどころか人々が利用できるように
ネットワークを発展させることを(ただでやるように)要請されてい
たのである.

研究ネットワーク時代から安定した教育研究環境の提供サービスの
ネットワーク時代に入っても, 一部の私立大学を除けば,
困ったことに, 人的, 予算的規模はさほど大きくなっていない.

民間プロバイダやサービスなら当り前な状況が提供できないのである.


(page 37)


北大での環境

キャンパスネットワーク HINES
(HINES 運用掛 http://www.hokudai.ac.jp/hines/)


北大構成員へのネットワークプロバイダ.
問題点: 部局・学科との責任分担/分割が不明瞭
圧倒的にマンパワー不足(Stanford の 10 分の 1)

よって最低限

迷惑をかけてはならない(知識を持たねばならない)

自分のことは自分でやらなくてはならない


(page 38)


北大での環境: 地球惑星専攻の場合は

専攻の組織「ネットワーク委員会」が統括

http://www.ep.sci.hokuda.ac.jp/~netcom/

HINES の専攻関係ネットワークと専攻サーバなど
専攻全体の共通情報環境を統括

管理ルール/利用ルールの策定, 諸問題の交通整理

管理者(所有者いわゆる教官)と現場担当者を明解にする

作法の悪い利用者の取締り, 処分


(page 39)


北大での環境: 地球惑星専攻の実働部隊

技術支援グループ (学生有志)
専攻関係ネットワークと専攻サーバ管理運営, 教育の実働部隊

http://www.ep.sci.hokuda.ac.jp/~epcore/

EPNetFan (院生有志) : 実践的勉強会
http://www.ep.sci.hokuda.ac.jp/~epnetfan/

技術支援グループ後継者養成
技術支援グループに迷惑をかけないように子どもたちの教育

→ 物理実験 1 = 情報実験 と結合


(page 40)


参照リンク


インターネット関係組織
JPCERT/CC http://www.jpcert.or.jp/
JPNIC http://www.nic.ad.jp/jp/

インターネット老舗活動
WIDE http://www.wide.ad.jp/index-j.html
Intenet Week http://iw2000.nic.ad.jp/
School of Internet (WIDE) http://www.soi.wide.ad.jp/

国立情報学研究所(旧学情センター)
http://www.nii.ac.jp/
SINET http://www.sinet.ad.jp/

北大全学ネットワーク (HINES) http://www.hokudai.ac.jp/hines/

北大地惑専攻
EPNetFan(諸資料) http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epnetfan/
技術支援グループ http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epcore/

東大数理計算数学 http://ks.ms.u-tokyo.ac.jp/

地球流体電脳倶楽部 http://www.gfd-dennou.org/


(page 41)


参考書, 参考文献


村井純 1997: インターネット, 岩波新書 新赤 416, 岩波書店.
村井純 1998: インターネットII, 岩波新書 新赤 571, 岩波書店.


(page 42)


宿題


主記憶の変遷
演算速度の変遷
ディスクの変遷
外部記憶装置の変遷
典型的な計算における必要メモリ
過去の計算機の写真
(page 43)