氏名 |
河合 裕幸 |
論文題目 |
地中海東部で採取された3本の第四系コア( ODP Hole 969F, 963D,
967D)における石灰質ナノ化石群集の年代変化 |
論文要旨 |
閉鎖的な海洋環境である地中海には、有機物に富む暗色のsapropel(=腐泥)が堆積
する。sapropelは東地中海とチレニア海に分布し、シシリー島・クレタ島の第三系~
第四系陸上セクションにも露出していることが知られている(Van Os et al., 1994)
。sapropelの形成メカニズムについて、Bradley (1938)以降、現在にいたるまで多く
の研究が行われてきたが、大きく2つのモデルに分けることができる。『production
model』と『preservation model』である。東地中海といっても海域によって水塊環
境は様々であり、同じコアのsapropelでも形成メカニズムは異なっているのではない
かという考えもある(Emeis et al., 2000)。
本研究で用いる3本のコア(ODP Hole 969F, 963D, 967D)については、浮遊性有
孔虫殻の酸素・炭素同位体比組成、sapropel中の有機態炭素・窒素同位体比組成デー
タからの検討(石澤, 1997MS; 中澤, 1999MS; 四方, 1996MS)や、コア中の粘土フラ
クションを用いた研究(飯島, 1999MS)がされている。しかし、同試料における石灰
質ナノ化石群集の研究はODP Hole 967Dのコアしかされていない(河合,2000 MS)。
そこで、本研究の第一の目的は、残りの2本のコア(ODP Hole 969F, 963D)におけ
る石灰質ナノ化石群集の年代変化を明らかにし、前述の研究結果と併せて東地中海第
四系堆積物中にいくつか存在するsapropelの堆積原因を探ることである。本研究では、
石灰質ナノ化石群集のなかでも下部有光層棲息種であるFlorisphaera profunda
とGladiolithus flabellatusに特に着目し、Molfino and McIntire (1990)のモデル
(図)に当てはめることで、sapropel形成時の表層環境復元を試みた結果、すべて
のsapropelの成因が上記二つのどちらか一方の堆積モデルで説明できるものでは無い
ことがわかり、sapropelによってどちらの堆積モデルをとるのか決定した。また、一
枚のsapropel層準のなかに堆積モデルの異なるPhaseが存在する可能性も発見した。
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