論文要旨 |
天体固有磁場の生成維持機構を詳細を調べるために,
回転球殻中に存在する導電性流体の対流運動とそれに
伴うダイナモ作用を計算するための数値モデル(以下,
回転球殻 MHD ダイナモ)を構築した.
天体固有磁場の空間構造・時間変動の様相は多岐にわたる.
それら磁場の生成維持機構を調べるには計算機による数値
実験が最も有効な手段である.近年, 計算機の性能が向上し
たことにより回転球殻 MHD ダイナモの数値計算を用いた研
究が多く行なわれるようになり, モデルの性能を比較検討す
るためのベンチマークが報告された
(Christensen, et al., 2001, 以下ダイナモベンチマーク).
本研究では構築したモデルを用いてベンチマークテストを
行ない, 得られた結果をダイナモベンチマークと比較した.
計算は, 磁場の無い球殻熱対流(case0) と,
球殻の内側と外側が不導体である場合のダイナモ計算(case1)
の二つについて, 各々空間解像度を変えて 3 通り行なった.
その結果, case0 の計算結果はベンチマークテストと良く一致
したものの case1 の計算結果には有意な差が見られた. その
原因はまだ調査中であり, 今後の課題である.
計算結果を元に, case0 と case1 の空間構造について,
特に対流パターンの形成とパターン伝播の仕組み,そして
磁場生成維持機構について定性的な理解を試みた.
case0 では, 球殻外側程対流セルが東へと傾く螺旋状パターン
が形成され, そのパターンが東向きへ伝播して行く.
このメカニズムはロスビー波の性質として定性的に理解する事ができた.
一方で case1 では, 球殻内部に渦の柱が局所的に存在し,
磁場の強い領域はその渦柱と一致する.
case1 に於ける磁場生成維持機構を, 単純な αω ダイナモとして理解しようと試みた.
しかし, トロイダル磁場生成過程は ω 効果では説明でき無かった.
|