2002 年度 地球惑星科学専攻 修士論文要旨集
2003 年 2 月 3 日

氏名 佐々木 洋平
論文題目 回転球殻 MHD ダイナモの数値モデルの構築
論文要旨 天体固有磁場の生成維持機構を詳細を調べるために, 回転球殻中に存在する導電性流体の対流運動とそれに 伴うダイナモ作用を計算するための数値モデル(以下, 回転球殻 MHD ダイナモ)を構築した.

天体固有磁場の空間構造・時間変動の様相は多岐にわたる. それら磁場の生成維持機構を調べるには計算機による数値 実験が最も有効な手段である.近年, 計算機の性能が向上し たことにより回転球殻 MHD ダイナモの数値計算を用いた研 究が多く行なわれるようになり, モデルの性能を比較検討す るためのベンチマークが報告された
(Christensen, et al., 2001, 以下ダイナモベンチマーク).

本研究では構築したモデルを用いてベンチマークテストを 行ない, 得られた結果をダイナモベンチマークと比較した. 計算は, 磁場の無い球殻熱対流(case0) と, 球殻の内側と外側が不導体である場合のダイナモ計算(case1) の二つについて, 各々空間解像度を変えて 3 通り行なった. その結果, case0 の計算結果はベンチマークテストと良く一致 したものの case1 の計算結果には有意な差が見られた. その 原因はまだ調査中であり, 今後の課題である.

計算結果を元に, case0 と case1 の空間構造について, 特に対流パターンの形成とパターン伝播の仕組み,そして 磁場生成維持機構について定性的な理解を試みた. case0 では, 球殻外側程対流セルが東へと傾く螺旋状パターン が形成され, そのパターンが東向きへ伝播して行く. このメカニズムはロスビー波の性質として定性的に理解する事ができた. 一方で case1 では, 球殻内部に渦の柱が局所的に存在し, 磁場の強い領域はその渦柱と一致する.
case1 に於ける磁場生成維持機構を, 単純な αω ダイナモとして理解しようと試みた. しかし, トロイダル磁場生成過程は ω 効果では説明でき無かった.