2002 年度 地球惑星科学専攻 修士論文要旨集
2003 年 2 月 3 日

氏名 山田 亜海
論文題目 OBS−エアガン探査により得られたHikurangi沈み込み帯(ニュージーランド東方)のP波速度構造
P-wave velocity structure of Hikurangi subduction zone, New Zealand, revealed by an OBS-airgun experiment in 2001
論文要旨  本研究の目的は、海底地震計(OBS)を用いた観測によりHikurangi沈み込み帯のP波速度構造を求めることである。Hikurangi沈 み込み帯は、ニュージーランド北島(オーストラリアプレート)の下に太平洋プレートが沈み込むことによって形成されている。海 溝(Hikurangiトラフ)は、陸から約200km東の水深約3000mに位置し、太平洋プレートはこの海溝からオーストラリアプレートの下 に、年約42mm/yrの速度で斜めに沈み込んでいる。なお、この海域においてOBSを用いた構造探査が行われたのは、今回が初めてであ る。
OBSによる観測は、NIGHT(North Island GeopHysical Transect)プロジェクトの一環として、2001年1から2月にかけてニュー ジーランド北島東方沖で行われた。OBS観測は、北海道大学とInstitute of Geological Nuclear Sciences(ニュージーランド)によ り実施された。この観測では、14台のOBSをHikurangiトラフからHowke Bayまでの全長約200kmの側線上に設置した。OBSの設置間隔 は13〜30km、水深41〜3265mの海底に設置された。なお、OBSの設置期間中にエアガン・シューティングが行われた。また、同時にス トリーマーを曳航してマルチチャンネル反射法地震探査(MCS)も実施された。
本研究では、OBS11台の記録を用い、フォワード・モデリングによる2次元波線追跡法により、ニュージーランド北島東方沖下のP波 速度構造モデルを求めた。解析では、まず、波線追跡法に必要な初期速度構造モデルを構築した。初期モデルは、浅部構造をτ‐p 法により求め、また、深部速度構造については、MCSの反射記録と過去の研究結果をもとに推定した。初期モデルを元に、最終的なP 波速度構造モデルを求める為には、まずレコードセクションから主な観測走時を読み取り、その走時を再現するための構造をフォ ワード・モデリングにより求めた。
以下に、本研究で得られたP波速度構造モデルの特長を述べる。1.北島東方沖では、太平洋プレートはニュージーランド北島の下 に緩やかに傾斜して沈みこんでいる。2.沈み込むプレートの厚さは約11‐14kmであり、Hikurangiトラフから陸側へ100kmのところ で沈み込む角度は約3.5度である。3.沈み込む太平洋プレート上には、Hikurangiトラフすぐ海側、トラフから陸側に距離約50kmに それぞれ海山が存在する。4.トラフすぐ海側の海山上部のP波速度は4.5km/s、さらにこの海山の下の海洋地殻第3層のP波速度は 6.9km/sで、この層の上面の形状は海山の形状に沿うように変化している。5.Hikurangiトラフから陸側に距離約50kmの海山は、高 さ4km弱、幅30kmで深さ約8kmに沈み込んでおり、海山上部のP波速度は4.9km/sである。6.海洋地殻第2層の垂直速度勾配は、一般 的な海洋地殻の垂直速度勾配に比べて小さい(0.1s-1)。7.上部プレート(オーストラリアプレート)堆積層は3層から成り、沈 み込んだ海山の陸側で厚さ9kmである。8.側線の陸側には大陸地殻が存在し、この大陸地殻の上には、水平距離40kmにわたって低 速度層が存在している。