論文要旨 |
千島弧と東北日本弧の会合部にあたる北海道中−東部には,鮮新世〜第四紀に形成されたカルデラ火山が多数存在する.そのうちの一つである阿寒カルデラは,長径約24km,短径約13kmの,北東―南西方向に伸びた長方形のカルデラである.過去の研究において,阿寒カルデラは中期更新世に大量の火砕流(阿寒火砕流堆積物)を噴出した結果形成されたと考えられているが,その詳細な噴火層序および噴火様式などはいまだ明らかにされていない.本論文では,阿寒カルデラの周辺に分布する火砕流堆積物について野外調査を行い,斑晶モード組成,鉱物化学組成,火山ガラスの化学組成および全岩化学組成などの岩石学的特徴も参考にして層序を確立した.
阿寒火砕流堆積物は新しいほうから順にAk-1〜21ユニットの間には,顕著な噴火の休止期を示す厚い古土壌や段丘堆積物および不整合が存在する.阿寒火砕流堆積物は,ほとんどが両輝石デイサイトの非〜強溶結火砕流堆積物および降下火砕堆積物である.火砕流堆積物のうち溶結相は7つ存在し,いずれも阿寒カルデラの方向に向かって溶結度を増す.等層厚線が作成可能な降下火砕物層は3つ存在し,いずれも層厚および軽石の粒径は阿寒カルデラの方向に向かって顕著に増加する.
Ak-3を含む流紋岩質の降下火山灰層が4的特徴からいずれも西方十勝地域を起源とする広域テフラであることが分かる.これらのうち最も古い降下火山灰層は十勝火砕流堆積物(池田,1982)に対比される.Ak-2ある屈斜路軽石流堆積物・(Kp火砕流堆積物は)などが,0.11 Ma年代(奥村ほか, 1985寒カルデラ火山は,前期更新世から約100測される.またその活動は十勝地域および屈斜路地域のカルデラ火山活動と同時期に行われていたことが明らかとなった.組成および火山ガラスの化学組成を分析すると,各噴火ユニットで特徴的な組成領域を示すことが分かる.このうち組成領域が顕著に異なる3取り込んでいる基盤岩片の種類と割合を測定すると,各噴火ユニットで特徴的な測定値を示す.これらのことから阿寒カルデラを形成した,それらは複数の火口から噴出していた可能性,つまり阿寒カルデラが複合カルデラである可能性が高いと考えられる.
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