氏名 |
小木曽 仁
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論文題目 |
Recursive tomography: Method and application to
the Hidaka region
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論文要旨 |
地震波トモグラフィ法は,地球の速度構造を推定するのに広く使われている.
従来のトモグラフィ法には波線追跡,及びインバージョンについて,それぞれ
次のような問題点があった.
(1)多数の震源ー観測点の組み合わせについて,十分な精度で波線経路とその走時
を計算しなくてはならない.
(2)逆問題の解としては最小2乗解が用いられることが多いが,一般的な
解法では大規模な行列計算が必要である.
本研究では,(1)の波線追跡にSaito(2001)で提案されたホイヘンス法を採用した.
この方法は,震源から任意の点への走時及び波線経路を短時間で十分な精度を持っ
て計算できる.さらに,複雑な速度構造の媒質においても問題なく計算できる
という利点がある.(2)の逆問題の解法については,Rodgers(1976)による
再帰的な最小2乗法を用いる.再帰的に逆問題を解くことにより,データの
増加に対してすべてのデータを用いた計算を繰り返し行うことなく,それまでの
結果を補正していく形でより改善された結果を得ることができる.これまで
地震学ではあまり用いられてこなかったこの2つの手法を組み合わせることによ
り,再帰的に推定される速度構造を用いて波線追跡を行い,通常のトモグラフィ法と
比較してより確からしい速度構造を推定するという「再帰的なトモグラフィ法」
を提案する.本研究では,まず与えた不均質速度構造モデルに対して数値実験
を行い,提案する新しい手法の有効性を確認する.次にこの手法を用いて日高地
方の速度構造を推定した.同一のデータを用いている勝俣ほか(2002a)と
比較すると,勝俣ほかの一部の領域をより細かく,とりわけ深さ方向に細かく
パラメータ化しても安定した解を得ることができた.我々の結果は勝俣ほかと
ほぼ同様な特徴を持っている.しかし,パラメータ化を細かくできたことにより,
勝俣ほかでは分解できなかった,日高山脈東部の深さ10km付近に特徴的な低速度帯
が新たに明瞭に求められた.低速度物質で構成されているという明らかな証拠はないが,
Iwasaki et al.(2003)による屈折法及び広角反射法探査によって独立に検出され
た反射面の位置にこの低速度帯は対応しており,日高地方のテクトニクスを考察
していく上で重要である.
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