2003 年度 地球惑星科学専攻 修士論文要旨集
2004 年 2 月 4 日

氏名 鈴木 悠介
論文題目 隕石に見る太陽系源物質の多様性の研究
論文要旨 現在の太陽系の様々な固体惑星物質は、原始太陽系に漂っていた微小の固体粒子(nm~mm nの様々な固体惑星物質は、原始太陽系に漂っていた微小の固体粒子(nm~mm)を無 数に集めて出来たと考えられる。これらの固体微粒子は、衝突・合体を繰り返し微 惑星(<~500km)へと成長する。さらに微惑星も衝突・合体を繰り返し、金属の多い 水星・固体惑星地球・ガスで覆われた木星、その他様々な惑星へと成長する。しか し、全ての微惑星が惑星へ成長するわけではなく、現在も微惑星のまま生き残って いたり、微惑星が衝突を受け破壊され飛び出した破片が太陽系に漂っている。その 破片が衝突や重力により軌道が変化し、新たな軌道が地球の公転軌道を横切る時破 片は隕石となって地球に落下する。
本研究では、最も始原的なコンドライト隕石の一つであるタイプCO3に分類されるコ ンドライトのうち、変成度の最も低い(変成・変質の痕跡のない)CO3.0-reduced typeとして評価されるYamato-81020隕石を入手し、そのマトリックス物質をSEM-BEI-EDS I-EDSにより観察・分析を行った。その結果、マトリックスが数100ミクロン程度の 単位で暗いマトリックスの領域と明るいマトリックスの領域に分かれていることが 解った。さらに、暗いマトリックスと明るいマトリックスの内部を詳細に見ると、 いずれにおいても2~5ミクロンのスケールで暗いドメインと明るいドメインがパッチ ワーク状に混在していることを発見した。分析の結果、それら4つのドメインの組成 に系統的な違いがあることが明らかになった。不思議なことに異なるマトリックス 中の暗いドメイン同士および明るいドメイン同士が、各々共通のMg/Si比(~0.6 and ~0.8)を持ち、他の元素についても非常に強い相関のあることが解った。
今回発見したマトリックスの構造は、太陽系星雲のガス中に浮遊するダストの付着 ・成長を反映しているものと推定される。4種類のドメインに対応するダストの集 団が星雲内の異なる場所に存在しなければならない。それらの異なる場所で、ダス トが相互に付着・成長して2~5ミクロン程度のダストボールになる。その後、暗・明 のドメインに対応するダストボールの混合が生ずる。その際コンドリュールやCAIな どのインクルージョンも同時に混合し、相互に付着・合体して数100ミクロンのaggregate egatesとなる。最後に暗いマトリックスを持つaggregatesと明るいマトリックスを 持つaggregatesの混合が生じて、付着・合体を繰り返してYamato-81020の母天体を 形成した。ダストから惑星へ進化する過程で必然的に辿る付着・合体・成長の最も 初期の段階が初めて見えたと考えられる。