2003 年度 地球惑星科学専攻 修士論文要旨集
2004 年 2 月 4 日

氏名 高橋 こう子
論文題目 非静力学対流モデルの定式化に関する再検討:
地形を考慮した雲解像モデルの開発へ向けて
論文要旨 本研究では乾燥大気における 3 次元準圧縮モデルの定式化と 離散化の再検討を行い, それを基に 2 次元準圧縮の数値モデル を作成し数値実験を行った.
直交直線座標系を用いた定式化は Klemp and Wilhelmson (1978) に従い, 地形に沿った座標系を用いたは定式化と斉藤 (1999) に 従った.
離散化の方法は CReSS (坪木 他, 2001) とほぼ同じである. 行った数値実験は, 音波の計算, 音波減衰項の係数を決めるため の計算, 数値粘性項の係数を決めるための計算, サーマルの計算 の 4 つである.

定式化と離散化の再検討を行ったところ, Klemp and Wilhelmson (1978) において示された離散化されたサブグリッドスケールの 乱流運動エネルギー方程式には, 離散化する前の式には存在した 2 つの項が無視されていることがわかった.
これら 2 つの項のうち, 1 つはサブグリッドスケールの運動は 非圧縮であると考えることによって無視することができるもので あった.
もうひとつの項のオーダは無視されていない別の項と同じオーダ であったため, 消去すべきではないことがわかった.

音波を計算する数値実験では, 初期擾乱として水平方向一様 または鉛直方向一様なガウス型の圧力をあたえ, 音波の伝播する 様子を調べた.
その結果, 圧力水平・鉛直速度とエクスナー関数が音速で伝播 することが確認された. 音波計算のための時間間隔を変えて 鉛直方向の数値解法にともなう音波の減衰の様子を調べたところ, 時間間隔を短くすると音波の減衰が小さくなることが確かめられた.

音波減衰項を決める数値実験では, 初期擾乱としてガウス型の 圧力を与え, 音波の伝播する様子を調べた. その結果, 音波減 衰項の値は水平空間格子間隔が 1,000 m, 鉛直格子間隔が 500 m, 時間格子間隔が 1 s の場合, 0.025 が適当であること がわかった.
数値粘性項の係数を決めるための数値実験では, 数値粘性項の 係数を変えた温位の移流を計算を行い, 適当な係数の値を調べた. その結果, 水平空間格子間隔が 1,000 m, 鉛直格子間隔が 500 m, 時間格子間隔が 1 s の場合にもっとも安定に計算できたのは, 水平方向の係数を 5.0, 鉛直方向の係数を 1.25 とした場合であった. 上記の音波減衰項の係数と数値粘性係数の値を用いてサーマルの 数値実験を行った. 下部境界の中心にガウス型の温度擾乱を与えてサーマルの浮上 する様子を調べた. 基本場の温度分布として, 高度 5,000 m まで乾燥断熱減率で 減少し, それより上は等温となる分布を与えた. その結果, 高度 5,000 m までサーマルが上昇し, その高度で横に広がって いくのが確認できた.