北海道駒ヶ岳(1133 m)は北海道渡島半島に位置する,円錐形の成層火山である.
1640年以降,4回の火砕流をともなう軽石噴火を記録しており,日本において最も活動的な火山の一つである.
最近では1996, 1998, および2000年に水蒸気爆発を起こし,現在,火山活動が活発な状態にある.
本研究では,北海道駒ヶ岳の深部までの比抵抗構造を明らかにするために,広帯域MT法探査を行った.
観測は,2001年から2003年にかけて行われた.取得されたデータは,リモートリファレンス処理,エディット処理が施され,解析には35測点のデー タが利用可能となった.
インバージョンによる1次元比抵抗構造解析結果は,深さ1 km程度まではTanimoto and Nishida (2000)
の結果と一致し,この深さまでの駒ヶ岳およびその周辺の比抵抗構造は大局的には2層構造で説明された.山体北側および西側で顕著である高比抵抗帯は,第 三系基盤を反映していると見るのが解釈の一つではあるが,ボーリング井の比抵抗検層の結果と比較すると断定はできない.また,この高比抵抗帯はそれが存 在する深さについては,重力探査による構造とは必ずしも一致しないことが認められた.周波数1
Hz以下ではSkewnessが0.1よりはるかに大きくなり,1次元構造解析が適さないという可能性が考えられた.インダクションベクトルは,0.1
Hz以下で北西〜北東の方向を示し,良導体である海水の影響を受けていることが予想された.
3次元フォワードモデリングにより,海洋の影響の簡単な評価を行った結果,見かけ比抵抗においては1 Hz以下で,位相差においては0.1
Hz前後で探査曲線に影響を及ぼしていることが明らかになった.しかし,探査曲線の低周波数帯におけるxy,
yx成分の分離は海洋の影響だけでは説明できないことから,駒ヶ岳地域においては海洋の低比抵抗よりも山体およびその周囲の比抵抗構造が探査曲線に強く 現れていることが推察された.
1次元解析で顕著であった山体北側および西側の1--5
kmの高比抵抗体の存在を仮定した3次元モデリングにより,探査曲線の大局的な傾向,また低周波数帯におけるxy,
yx成分の分離が表現された.しかし,全測点の探査曲線を説明するには至らず,一部の測点ではスタティック・シフトの可能性が挙げられた.この結果を踏 まえ,今後はより正確に探査曲線を説明する比抵抗モデルの構築をすることが必要である.
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