2004 年度 地球惑星科学専攻 修士論文要旨集
2005 年 2 月 2 日

氏名 寺門 直哉
論文題目 粉末X線回折データの指数付けに関する考察
論文要旨 粉末X線回折法(粉末法)は単結晶が得られない物質の構造解析 に有効であり、近年注目されている。しかし、粉末法において得られるデータは 三次元方向に分布している回折像を一次元上に投影したものであり、単位格子を 求めることが困難である。今までに考案されてきた方法には、(1)結晶を三斜 晶系として晶帯軸を探す方法(伊藤,1949)、(2)回折ピークに指数をランダ ムに配当して格子定数を求める方法(Werner et al., 1985)、(3)格子定数 を幅を持った領域として扱いその幅を半分にしてゆく方法(Louer & Boultif,1991)などがあり、それに基づいたプログラムが発表されてきた。しか し、三斜晶系では指数が付かなかったり、候補がいくつも出てきてどれが正解か わからないという問題が解決できていない。

本研究では、新たな指数付けの方法として、格子定数を乱数によって仮定し、そ れをもとに観測された回折ピークに指数をつけることができるかを検討して判断 するアルゴリズムを考えた。このモンテカルロ法による格子定数の探索には、 (1)アルゴリズムが単純なため、プログラミングが簡単で保守も容易である、 (2)各定数を独立に検討できるので遺伝子アルゴリズムなどの他の方法と組み 合わせて、探索を効率化できる可能性がある、(3)探索する範囲全体の様子を 最初に把握することで探索範囲を絞り込み、効率的な探索が可能である、といっ た特徴が存在する。検討すべき事項は、乱数によって仮定された格子定数を効率 よく探査するためにはどのような評価関数を用いれば良いかということである。

今回用いたのは、(1)指数の付いたピークの数、(2)Q値の残差二乗和、 (3)Q値の残差二乗和の平均値の3つである。これらを用いてfortran90でプ ログラムを開発し比較実験を行ったところ、Q値の残差二乗和の平均値での評価 が最も良い結果が得られた。このプログラムでは等軸晶系、正方晶系、斜方晶系 の一部に対して指数付けが可能であった。単斜晶系以下の低対称の試料について も同様の方法で格子定数の探索が可能であるが、現段階では所要時間が現実的で ないためプログラムの改良や計算機の高速化が必要である。