地震がいつ、どこで、どのような大きさで発生するかを知ることは難しい。
断層のスティック-スリップが、地震が発生する一つの機構と考えられている。
バネとブロックを用いたモデルによりスティック-スリップを再現し、地震を
シュミレーションしようと多くの研究が行われている。スティック-スリップ
をモデル化する場合、摩擦力をどのように扱うかが問題となる。
多くのバネ-ブロックモデルではブロックに加わる力が最大静止摩擦力を越える
と、ブロックの摩擦力を動摩擦力へと切り替えることでブロックにスティック-
スリップを発生させている。静止摩擦力から動摩擦力へ切り替えるような不連続
性をもつ運動方程式系を解析的に分析することは困難である。
Maeda and Yokomori(1999)やYokomori(1997)では運動方程式を解くことで
自然とスティック-スリップを起こすことのできるレイリー振動子を
用いて、地震活動の力学モデルを構成した。連結したレイリー振動子系はカオス的
な振る舞いをし、地震活動を良く再現する。
また、Hainzlら(1999)ではHekiら(1997)の研究を受け地殻のゆっくりとした運動
による断層の応力の変化を考慮したバネ-ブロックモデルを構成し、研究している。
Hekiら(1997)によれば余効すべりは本震時に放出された地震モーメントに匹敵す
る量のエネルギーを放出している。
本論文ではRayleigh(1894)により提案された摩擦力をHainzlら(1999)のモデル
に適用して地震活動の力学モデルを構成し、シュミレーションの結果を地震活動に適用した。
また、本論文で扱うモデルを力学系の方法で分析した。本論文で扱うモデルの
基本構成単位は、粘性による応力緩和をレイリー振動
子に伝えるブロックとレイリー振動子の二つのブロックからなる。この基本構成
単位をグループと呼ぶことにする。2グループ連結した本モデルでは
Maeda and Yokomri(1999)やYokomori(1996)と同様にカオス的な振る舞いを示す
ことがわかった。また、多数のグループを連結させた系はより複雑な振る舞いを
見せ、地震活動の統計的性質で逆べきとなるマグニチュード-頻度関係や
発生間隔-頻度関係を満たすことがわかった。本モデルの地震の再現性をMeada and Yokomori
(1999)やYokomori(1997)と同様にエネルギー積算解放曲線の比較から調べた。
地震活動によるエネルギー解放積算曲線の任意の一部分を抽出し、
この曲線と最もよく似ているモデルの曲線部分を探し、この前後の期間において二つの曲線の
比較的良い一致を得た。本論文で構成されるモデ
ルの利点はそれぞれのパラメーターを全てのグループに等しく与えても、
系はカオス的な振る舞いをすることである。
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