2004 年度 地球惑星科学専攻 修士論文要旨集
2005 年 2 月 2 日

氏名 塚原 大輔
論文題目 NCEP/NCAR 再解析データを用いた対流圏帯状平均場の解析
論文要旨 NCEP/NCAR 再解析データを用いて 1979 年から 2003 年までの 25 年間に見られ る月平均帯状平均場の季節変化の変動幅を調べた. また質量流線関数の極値で定 義したハドレー循環強度の年々変動と熱帯降水活動, 亜熱帯ジェット, 擾乱の活 動度それぞれの年々変動との対応関係を調べた.

ハドレー循環強度の 25 年平均値は両半球ともに 6.0e10 kg/s であった. この 値はゾンデの観測データから見積もられたハドレー循環強度の値 (Oort and Yienger, 1996)と比べると, 北半球の年平均値は 約 0.7 倍, 南半球 の年平均値は 約 0.8 倍である. また, ハドレー循環強度の平均年変動(25 年平 均の月平均値で定義される季節変化)の範囲は北半球で 2.0e10 から 16.0e10 kg/s, 南半球で 4.0e10 から 15.0e10 kg/s である. 平均年変動の幅も Oort and Yienger (1996) の結果に比較すると小さいものとなっていた.

月平均ハドレー循環強度を使って年々変動を調べたところ, ハドレー循環強度の 平均年変動からの偏差は -3.2e10 〜 3.5e10 kg/s である. 偏差の絶対値が大き い時は, おおむね El Nino 年と一致しており, ゾンデ観測データの見積もり (Oort and Yienger, 1996) と整合的な結果となった. またハドレー循環強度の 年々変動と熱帯降水活動の年々変動との対応関係について調べた結果, 北(南)半 球におけるハドレー循環強度が強いときには南(北)半球の 5 度 -15 度帯におけ る降水が増加している傾向にあることが示された. 一方, ハドレー循環強度の年 々変動は亜熱帯ジェットや傾圧擾乱の活動度の年々変動とは, 時系列データを見 る限り明確な対応関係を示さない. この結果は, ENSO イベントに準拠した合成 図により El Nino 時にはフェレル循環強度が弱まるという Oort and Yienger(1996) の結果を支持するものではなかった. しかしながら, このことは相関解析を行って初めて見られる強弱の関係がある可能性を否定する ものではない.