本研究では1990年代後半から2004年にかけての北太平洋での大きな変化である1998/99年,
2001/02年の変化について研究した.Minobe(2002)によると,北太平洋1998/99年の変化は
北太平洋中央部での昇温,北太平洋東部での温度低下,さらには黒潮続流域でのかつてない
温度上昇で特徴づけられ,レジームシフトの可能性もあるが,中央部と黒潮続流域との遅延
関係がみられないことから,1976/77のシフトとも異なった特徴を持つとした.また,Bond et
al.,(2003)らによるとこのような変化は2003年以降持続しなかった.
本研究ではそのような変化の特徴と要因をデータ解析によって調べた.SODAデータから
1998/99年に北太平洋中央部で温度上昇と北太平洋東部で温度低下した.また2001/02年
には北太平洋中央部で温度低下と北太平洋東部で温度上昇していた.熱収支解析から
1998/99,2001/02年の変化では共通して,北太平洋中央部では西方からの東西移流項
と,潜熱フラックスが同程度寄与しており,北太平洋東部では,潜熱フラックスによる
寄与が大きい.潜熱フラックスに関してはEPパターン(Minobe2002)に関する風の変化が,
東西移流項に関しては黒潮続流の流量が重要であった.
また,衛星データにから黒潮親潮続流域では1998/99年温度上昇,2001/02年に温度低下し
た.黒潮続流域の温度変化に対しては,1998/99年に黒潮流軸の大きな北上が,2001/02年
には南下が重要な要素の一つであった.しかし,流軸変化のメカニズムやなぜ中央部と
黒潮親潮続流域が同時期に変化したのかということに関して疑問が残った.
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