2003年9月26日の十勝沖地震(M8.0)の震源域は1952年十勝沖地震(M8.2)の震源域と
ほぼ一致しており、同一の領域がすべったと考えられている(yamanaka and
Kikuchi 2003)。この
ような現象はプレートの沈み込みに伴う地震の特徴であるといえる。2003年十勝沖
地震発生後、10月1日から11月20日にかけて海底地震計約40台を用いて実施された
余震観測の記録から、2003年十勝沖地震の余震は太平洋プレートと陸側プレートの
境界部に集中していることが明らかになった。また本震のすべり量が大きなところ
では規模の大きな余震が少なかった(山田他2005)。
そこで本研究ではその余震活動の空間分布と海底地下構造との関係をより明確にす
るために、2004年10月に震源域付近で海底地震計を用いた人工地震探査をおこなっ
た。得られた記録から地震波速度構造を求め、余震分布やアスペリティ分布との比
較を行なうことが目的である。
観測では12台の海底地震計を用い、20lのエアガン2台を人工震源として屈折法地震
探査をおこなった。海底地震計は、本震付近を通り海溝と直交する測線上に設置さ
れ、屈折法地震探査と同時に、50チャンネルのハイドロフォン・ストリーマーを用
いて反射波の観測もおこなった。しかし観測機器の不備のため反射波の記録を得る
ことはできなかった。
回収された海底地震計のうち記録のとれていたもの11台分のデータを使用して波線
追跡法(ZELT ラベル)によるフォワード・モデリングをおこなった後、得られたモ
デルを初期モデルとして2次元走時インバージョン(ZELT ラベル)をおこなった。ま
た、浅部堆積層の速度構造を拘束するため、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が2000年
に同一測線上でおこなったマルチチャンネル反射法地震探査の記録を解析に利用し
た。
解析の結果深さ約15kmまでのP波速度構造を求めることができた。しかしスラブの
15kmよりも深い部分からの波を読み取ることができなかったため、本震付近でのプ
レート境界の構造を得るに至らなかった。本研究で得られた速度構造モデルは、
2003年十勝沖地震の余震分布や周辺地域でおこなわれた過去の構造探査の結果と調
和的なものであった。
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