ある男の奇行


〜序〜

 それは、"恐怖の大王" の事などすっかり忘れ去られ、
"21世紀最初の" という枕詞にもいい加減飽きてきた2001年の夏の出来事だった。

 札幌市内の某所である噂が飛び交った。


〜噂〜

A「昨日さ、俺変な奴に会ったんだよ」

B「どんな?」

A「大通りで信号待ちしてたら隣にチャリが来たんだ」

B「それで?」

A「何気なくそいつを見たら、そいつの胸が光っていたんだ」

B「はぁ?」

A「本当だって! なんかTシャツの中がボーっと光ってたんだよ!」

B「幻覚でも見たんじゃねぇのか?」

A「俺も最初はそう思ってよく見たから間違いねぇって!」

B「ペンライトでも付けっぱなしだったとか?」

A「あれは絶対わざとだ」

B「罰ゲームでもやらされてたんじゃねぇの?」

A「俺とか周りの人間が注目しているのに堂々としてたぞ」

B「…確かに変な奴だな」

C「あ、ひょっとしてあれは…」

A「お前も見たのか?」

C「いや、確信は無いんだけどね」

B「どういうことだ?」

C「俺も昨日豊平川の河川敷を凄いスピードで移動している光を見たんだ」

B「…」

C「それこそ幻覚だと思って言えなかったんだけどさ」

A「まぁ普通信じられないよな」

C「もしかすると今の奴かも知れないな、と思ってさ」

B「…俺もそいつを見たくなってきた」


〜真相〜

M「なんだそれ?」

W「実験で使おうと思って講座で買ったアルゴンランプだよ」

M「なんで持ち歩いているの?」

W「調べてみたら偽物だったんだよ」

M「で、使い道が無くて君が私物化しているわけか」

W「そういうこと」

M「ちょっと貸して」

W「いいよ」

M「結構明るいんだな」

W「まぁね」

M「帰りの河川敷は暗いんだからこれつけて帰ったら?」

W「そうするか」

M「どうせなら帰る途中ずっと点灯したら?」

W「それはちょっと…」

M「それなら途中は服の中に入れるとか」

W「それ採用」


※この話は一部フィクションです


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02/02/20 作成