在りし日の階段にて
自宅から駅への道の途中に高さ 10m 程の階段がある。
庭石くらいの大きさの石を適当に詰めてコンクリートで隙間を埋めて作ってあり
石が剥がれて階段に欠損ができやすい。
一段 15cm くらいの間隔で冬になると段差が雪で充填され、
それが凍って氷の坂になり大変危険である。
最近その階段の改修工事が始まり現在は仮設の階段を通っているのだが、
今回はその階段で遭遇したちょっと不思議な人たちの話をしようと思う。
去年の12月下旬のある日、辺りはすっかり雪景色になっていた。
自分はいつものように駅への道を歩いていた。
例の階段に着いた時、そこに見慣れない人たちがいた。
自分と同じくらいの年齢と思われる男が二人。
どちらも西洋人らしく、階段の上で何かのタイミングを計っている。
足元を見るとスノボーを装着している。
一人の男が構えたかと思うと階段を飛び出していった。
途中にある少し面積の広い段で弾みをつけてジャンプ、一気に下る。
階段を降りた先にある、歩道を除雪してできた小さな雪山に
軽く乗り上げ見事に着地。
あっけに取られて見ているこっちに気付いたらしく、
もう一人の男は自分が通るのを待っている様子。
気を取り直して階段を下りようとしたら、
手すりの側にもう一人男がしゃがんでいる事に気付いた。
先の二人よりも20歳は年上と思われる男でおそらく日本人。
手にはデジタルビデオカメラを持っている。
階段を下りた数メートル先は車道で、子供ですらそりすべりをしない場所で
スノボーに興じる西洋人青年たちとそれを撮影している日本人中年。
状況を整理するとこうなるわけだが、彼らの雰囲気に気おされて
どこを突っ込めばいいのか、果たして突っ込んでいいのか判らず
何も言えずに素通りしてしまった。
後から冷静になって考えてみればたいして不思議ではなく、
どうとでも解釈できる状況だがそれを言っては面白くない。
後一週間程で階段の改修工事が終る。
新しい階段はきっと以前より歩きやすくなっているだろう。
その階段で今度はどんな不思議な出来事に出会えるのだろうか。
02/12/03 作成