昭和二十三年逍遙歌 春静寂なる 中島通雄君 作歌 佐々木淳君 作曲 (1 了あり) 1. 春静寂なる石狩の 曠野に漂泊ひて人を哭き 秋蕭々の寮窓に倚り 夕雲遠く友を呼ぶ 北斗の啓光さしそえど 哀れ悲しき旅ならむ 2. 北溟ゆく雁は名のみにして 暮る秋風に啼く虫か 楡梢に喘ぐ郭公か はた又魂の語らひか 現の波濤は荒くとも 知るや無象の天の外 3. 十勝の峰に断雲怒り 白銀吼ゆる朝風も 奇しき調の琴と聴き 燃ゆる理想に悶えつつ ただひたぶるに辿りゆく 長き生命の斗争に 4. 自然の芸術変らねど 何処に祓所を尋めゆかむ ああ孤独の寂寥を 味はひ知れる人ならで 誰に語らん入相の 鐘鳴りひびく楡陵の上 5. 花咲き散りて春秋の 遷りてここに三星霜 逝にし遊宴の宵󠄁の夢 たぎる情熱を篝火に 残恨の杯を汲み交はし 高唱はなんかな自治の歌 6. 今逍遙の原野に萠ゆる 森の翠の色深く 行手遙けき豊平の 清流に泛ぶ綺花の影 哀れ愛しき絢夢なれど 我が生命こそ真なれ