昭和二十四年寮歌 彷徨へる心のままに 池田基君 作歌 伊東嘉弘君 作曲 (序,冬,結 繰り返しなし) 序. 彷徨へる心のままに 見返りの陵を登れば 野は遙か去にし日の面影 簫々の闇にとけゆく 斯くあるは人の宿命か 天地に星の飛ぶなり 冬. 雪の舞ふ砂丘薄れて 光輝なき旧りし仕種は 忘却の寄する汐音に 消え去りぬ名残の水際 叫ぶには余りに深く 涙には余りに虚し 春. 清冽の玉散る知性 燃え狂ふ情熱の焰 若き身の裏に留めて 相剋の旅を逝くなり 苦悩しみに頬を濡らせば 春雨も楡影つたふ 夏. 初夏の野に陽炎たてば 痛ましき魂の疵の 陽に癒えて幸福は希望は 微風に咲き出づる華 育くみし白珠の水 浜茄の赤き血潮よ 秋. 秋深き磯に佇み 汐飛沫浴びし彼の時 月影に宿命解かんと 友垣の誓ひし言葉 斯く故に千草ふみしき 寥々の孤杖を運ぶ 結. 三春秋の絢夢原始林影に 散り果てて悲哀を秘めつ 陵を去る遊子の瞳 又燃えぬ愛情と決意に 暁の新たな旅出 永遠に時は流れぬ