大正十五年開学五十周年記念寮歌 爪紅の黎明の風 井上哲郎君 作歌 河口忠雄君 作曲 (1 繰り返しなし) 1. 爪紅の黎明の風 白羽箙へる若武者が 青春うち慕ふ風情あり 赤き血潮の溢れては 北溟の城花も散る 香ふ二十を愛しむ哉 2. いとうら若き觴を 逆巻く潮に浮べつつ 宿命の羈絆解きうてば 無量無限の陽光に 真白き鳥のゆく如く 北海の奥の流離よ 3. ああ黒潮や、さざれ床 いるかの夢に身をひそめ 郷愁空に盃もなく 熱ある友を求めては 溢るる涙袖うちて 吾等が寮歌を含むなり 4. 淡紅の花陰に 裸形の友も集ひして 生くる力の征矢ひけば 牧羊神も醒めつらむ 孤雲の彼方はるけくも 胸うちふるふ希望あり 5. されど悲恋の跉跰は 浩蕩雲にむせびけむ 断腸を撞かむ巨鐘の 鐘楼の夢やいかなれば 嘆かひ濡るる月魄に 秘めにし曲をつたへずや 6. 嗟呼青雲を吟じなば 月毛の駒に星止めむ 秋水義に反きては 破波の想堪へがたく 酒盃にむせぶ白雲の 乱るる酔歌に恨みあり 7. 大熊星のさすほとり 快楽の濁舟ひくく見て 舞ひつ歌ひつ白羊の あこがれ楡の駅路に 自由の泉青春を うち連れ汲まん誇り哉