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   帯域幅とデータ量

帯域幅は,データ通信に使われる電波・電気信号の周波数の範囲ことをいい, 回線速度とほぼ同義としてよく用いられる. 1 秒間に送ることができるビット数 bps (bits per second)で表す (株式会社インセプト, 1997-2001). つまり,回線速度が大きいというのは, 1 秒間に送ることができるデータ量が大きいという意味である.

320x240

ここで,動画の 1 秒間のデータ量を見積もってみると,

白黒:320 x 240 x 30 = 2304000 bits = 2.304 Mbits
8 ビットカラー: 320 x 240 x 30 x 8 = 18.432 Mbits
16 ビットカラー: 320 x 240 x 30 x 16 = 36.846 Mbits
24 ビットカラー: 320 x 240 x 30 x 24 = 55.269 Mbits

(ただし,未圧縮,音声なし,サイズ 320 x 240, 30 コマ(フレーム)/秒の場合)
となる (山口 英, 2000).

データはネットワークに送り出されるとき,パケットという束に分割される. 分割されたデータには,それぞれ,パケットの大きさ・送信元の IP アドレス・ 宛先の IP アドレスなどの情報が追加される. この追加部分をオーバーヘッドという. パケットは,下図のようになる (株式会社インセプト, 1997-2001). 1 バイトは 8 ビットに相当する (株式会社インセプト, 1997-2001).

ヘッダ

1 秒間に送信されるデータ量は,

動画の 1 秒間のデータ量 + 各パケットのオーバーヘッドのデータ量
になる. さらに,音声がある場合はこれに音声のデータ量分も加えられる. 例えば,音声なしの白黒映像だったとしても,2.3 Mbps 以上になってしまう.

このような動画を配信するためには, 1 秒間に送信されるデータ量分以上の帯域幅が必要になってくる.

次に,実際に使われているネットワークについて見ていく. 現在,ADSL や 光ファイバーといった広帯域幅のネットワークが整備されつつある. 表 1 は様々なネットワーク回線の帯域幅を表している.

表 1 ネットワーク技術と帯域

〜1Mbps 〜10Mbps 〜100Mbps 〜1Gbps 1Gbps以上
LAN -- Ethernet(10Base T)
TokenRing
Ethernet(100Base T)
FDDI
Gigabit Ethernet
HIPPI
Fibre Channel
ATM
GSN
Myrinet
WAN ISDN(2B)
デジタル専用線
フレームリレー
モデム接続
ATM Megalink
デジタル専用線
フレームリレー
ADSL
CATV
ATM Megalink
デジタル専用線
ATM Megalink POS
無線 携帯電話 Wireless Ethernet
802.11
point-to-point 型
(CanoBean など)
-- --
(山口 英, 2000)

表 1 を見ると,ADSL でもカラーの映像を配信するには十分とはいえない.

その上,ほとんどの回線は,多くの人が共有している. 同時に接続している人が多ければ多い程, それだけ帯域幅は狭くなってしまう. 例えば,8 Mbps の回線を同時に利用している人が 10 人いるとすると,単純計算しても一人分の帯域幅は 800 kbps になる. すると,サイズが 320x240 の白黒画像のときでも帯域幅は足りなくなってしまう.

Map

また, 今のところ全てのユーザが広帯域の回線を利用できる環境にあるとは限らない. 理由としては,以下のことが考えられる.

  1. 広帯域の回線は都市部以外にはほとんど提供されていない
  2. ユーザが常に広帯域の回線を使用しているとは限らない
  3. 広帯域の回線に接続しているとしても, 送られて来るデータが狭帯域の回線を通る可能性がある

右図で 3 を説明する. (1) (サーバ A → サーバ B → サーバ C)はパケットが広帯域の回線を 通る道順,(2) (サーバ A → サーバ C)は狭い帯域の回線を通る道順を表している. ユーザは (1) の回線を使うか (2) の回線を使うかは選択できない. (2) の回線を通った場合,パケットが消失しやすくなる.

以上から,未圧縮のデータを配信するのは現状では不可能といえる. そこでこの問題を解決するためには,圧縮技術が必要不可欠になってくる.

     Last Update : 2001/10/31 (koko@ep.sci.hokudai.ac.jp)