惑星は太陽から放射エネルギーを受け取り, それと同じだけの
エネルギーを放射の形で宇宙へ放出することで, ある一定の温度を
維持している. これを放射平衡が成り立っているという.
太陽から入ってくる短波放射のエネルギーと, 惑星から出ていく
(地球の場合は長波もしくは赤外)放射のエネルギーは釣りあっている
という意味である.
惑星に大気が存在しない場合には, 太陽から受けた放射エネルギーは
惑星の地面によって吸収され, 惑星は暖められる. このとき注意すべき
なのは, 惑星がある反射率(アルベドという. 0〜1の値をとる. 地球のアルベドは
0.3である)で太陽からの放射を反射することである. よって反射されずに
惑星表面まで到達した太陽放射によって惑星は加熱される.
惑星はある温度 Te となり, この温度の4乗に比例した
放射エネルギーを宇宙に放出し, 惑星表面の温度を一定に保つ.
このときの温度 Teを
有効放射温度という.
等温等密度の大気を考える. スケールハイトは大気の厚さの尺度であり,
大気圧が 1/e (eは自然対数の底. よって 1/e は約0.368) になる高さ
として使われることが多い. 一般的にある高さ h の気圧 phが
ph/e まで指数関数的に減少する高さをスケールハイト H として
式で表すと, H = RT /mg となる. ただし,
m:ある高さ h の空気の平均分子量, R:気体定数,
T:気温(単位はK), g:重力加速度である.
高度 h より上では, m, g, T が不変であると仮定すると,
気圧 p の高度分布は
p(z) = ph e-(z-h)/H
と表される.
すなわち高度 z が h+H の場所で, 気圧 p(h+H) は
高度 h の気圧 p(h) の 1/e に減少する. 地球の表面における
スケールハイトは地上気温 0°Cとして約 8 km となる.
スケールハイトを用いると, 密度や温度の異なる惑星について, 大気の厚さの
比較ができて便利である.
スケールハイトに関連して, 大気がどのくらい惑星に束縛されているかを
表す尺度に, エスケープパラメータ λ がある.
エスケープパラメータ は, 惑星からの脱出速度と気体分子運動の「最も
確からしい速さ」との比(あるいは惑星の重力エネルギーと分子の熱運動の
エネルギーの比)であり, 値が大きいほど大気が散逸しにくいことを
表す. このエスケープパラメータは
惑星半径 r とスケールハイト H との比にもなっている(λ = r/H).
惑星半径に比べてスケールハイトが小さい時には λ が大きくなり,
大気は惑星にしっかりとらえられているといえる.