$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$

                   森羅万象セミナー         第 19 回

$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$

      時・場所:10/7 (木) 17:00 - 理3号館 103 号室 (電脳大飯店)


              講演  :  見延 庄士郎 (地惑 助教授) 


        『北太平洋大気・海洋の数十年変動 
                    -大気海洋結合システムはワルツを踊るか?-』
 

  気候変動研究をリードしたエルニーニョ研究も一段落し、近年では十年以上の長期
変動が注目されている。よく研究されているのは、10年~20年程度の時間スケール現
象であるが、それ以上の長期変動として1990年代半ばに北大西洋を中心とする60-70年
変動が存在することも報告されている。一方北太平洋でも発表者らが50年変動の存在
を報告し、その実態が徐々に明らかになりつつある。そこで今回の発表では、50年変
動を中心として、北太平洋の数十年変動に対する取り組みを紹介しよう。
  まず、Minobe (1997, GRL) では、北太平洋でも50年程度の周期を持つ変動が存在
することを報告した。また、50年変動の符号反転は、近年大きな注目を浴びている
北太平洋の気候のレジームシフト(1920年代・40年代・1970年代の3回)に対応する。
気候レジームシフトはアリューシャン低気圧の勢力に典型的に示されるが、その影響
は日本にもアメリカ西岸にも明瞭に認められる。一つのレジームは20~30年間継続す
る一方、レジーム間の遷移は数年と急峻である。
  このような、比較的長期のレジームの持続と急峻な極性反転は、50年変動と北太平
洋で振幅の大きなもう一つの長期変動である17年変動が同期していいるためであるこ
とをMinobe (1999, GRL)は示し、その原因としして大気海洋システムの非線型共鳴を
提案した。このような非線型共鳴は、中緯度海洋が大気に影響を与えるという条件の
もとで、簡単なモデルでも説明することが可能である。
  今回の副題は、50年変動と17年変動が相対的な周期比1:3で同期していることから
取っている。すなわち、3拍子音楽の代表であるワルツのように、17年変動が3拍子
を刻むと50年変動が符号反転し、新たな小節ともいえるレジームに突入する。副題の
問い「ワルツを踊るか」に対しては、結局データ解析からは踊ることが強く示唆され、
理論計算からも踊ってもよいことが示される。
  その他、50年変動が北太平洋および北極域の経年変動の振幅に大きな影響を与えて
いること(Minobe and Mantua 1999 PiO)、北太平洋の生態系(イワシやサケ)にも支
配的な影響を与えること、樹木年輪や海底堆積物にもこの時間スケールの証拠がみら
れること、さらには一日の長さ(length of the day)にも類似の変動が見られること
も紹介しよう。また、数十年変動や気候レジームシフトに関連して、発表者がコンビ
ーナーを務めた/務める
  IUGG99, Ocean/Atmosphere Variability and Predictability, イギリス, 
    (http://www.bham.ac.uk/IUGG99/jsp25.htm),
  North Pacific Marine Science Organization, The nature and impacts of North 
     Pacific climate regime shifts. ロシア, 
    (http://pices.ios.bc.ca/annual/announce.htm)
  Western Pacific Geophysical Meeting, 2000, Interdecadal/Interannual 
     Variability in the Pacific Ocean, 日本
を通じて、最近の十年~数十年研究のトレンドについてもご紹介したい。50年変動
の研究は、非線型力学を含む大気・海洋から古気候や固体地球までを含む広がり
を持ち得るものである。
                 

第 20 回以降の予定 

10/14 (木)  廣田 勇 (京大理教授) 
                        『ラプラスから200年・・・・大気波動論の歴史と現状』

10/20 (水)  Professor David H. Green(ANU:オーストラリア国立大学)
           『Experimental and geochemical investigations on magma 
                      genesis and mantle processes.』

            Professor David H. Green 
            (ETH スイス連邦工科大学地質学教室,Tectnophysics 主編集者)
           『Mantle-crust transitions in the Kohistan Arc Complex:
            Petrostructural evidence and geodynamic consequences』

10/25 or 26 or 27 佐藤春夫 (東北大教授) タイトル未定 (地震学関連)

10/X    森田英章 (数学 DX) 『無限可積分系、特にある種のソリトン方程式の話』

        渡部重十 (地惑 教授) 『近未来の惑星大気探査 (仮題)』   


  話題希望要望サポーター、大募集中です


※諸事情により、変更や追加のある場合があります。

---
 セミナー幹事:倉本 圭(Kuramoto Kiyoshi)
     北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 助手
     Room:理学部3号館307号室
     Phone: 011-706-3567, Fax: 011-746-2715 
         E-mail: keikei@neko.lowtem.hokudai.ac.jp