$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 森羅万象セミナー 第 40 回 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 時 : 10 月 4 日 (水) 17:30-18:30 場所: 理5号館 201 号室 松本 公平 (北大低,PD) 『個別有機分子-特にステロール化合物-の 安定炭素同位体比測定と地球化学への応用』 過去の地球環境の生物基礎生産の推移を見積もる際にしばしば有機地球化学的手法が とられる。そのなかでも特に特定の生物が生産する有機化合物がある。この有機化合 物をトレーサーとすることにより、過去の地球環境を復元することが可能となる。こ の有機化合物のことをバイオマーカーと呼ぶ。幸いにして、海洋一次生産を担うある 特定のプランクトンが生産するバイオマーカーがある。例えば脂質であるC37不飽和 長鎖ケトン(C37アルケノン)は海洋藻類のハプト藻という生物のみ生産することが 知られている。またコレステロールに代表されるステロール化合物の中にもたくさん のバイオマーカーが存在する。例えばダイノステロール(C30ステロール)は赤潮で 知られる渦鞭毛藻類にのみ固有に存在することが知られている。 バイオマーカーの評価については、定量分析により、過去の一次生産やその堆積場の 議論(有機化合物はどこから来たのか等)を行ってきた。しかしながら定量だけでは 古環境の議論には限界があった。一方で、別の古環境増を復元するためのパラメータ ーとして、炭素同位体比がある。有機化合物の炭素には安定同位体13Cが存在する。 この安定同位体と12Cとの相対割合(炭素同位体比)は過去の報告からソースの違い (陸上高等植物起源、海洋一次生産起源)や、光合成の際に基質となる二酸化炭素の 濃度、その安定同位体の存在量、生物のアクティヴィティーによって大きく異なるこ とが知られている。従来は有機炭素全体の炭素同位体比を用いて議論していたが、演 者は個別有機化合物の炭素同位体比、特にバイオマーカーが多く存在するステロール の炭素同位体比測定法を確立した。この確立はより詳細な過去の地球環境変動を理解 するのに役立つと思われる。このステロールの炭素同位体比からステロール化合物の 起源、バイオマーカー化合物からみた過去の一時生産力の推移、また生物分解の程度 などを種々の地球化学的試料を用いて議論する。 世話人:山本 聡 # 諸事情により、変更や追加のある場合があります。 # 話題希望要望サポーター、大募集中です セミナー幹事:倉本 圭