$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 森羅万象セミナー 第 50 回 http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~sinra/ $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 日時 2001 年 5 月 24 日 (木) 16:30 〜 18:30 場所 理学 5 号館 Rm 201 早川知範 (北海道大学理学研究科地球惑星科学専攻) 『1次元熱収支モデルを用いた火星極冠の形成シミュレーション』 [講演要旨] 火星におけるCO2循環は主に、大気と南北両極冠との間のCO2交換によって形成さ れている。したがって火星の場合、極冠を中心とした視点から大気大循環を研究 することは非常に重要なことである。数値シミュレーションではLeighton and Murrayモデルが実際に火星の両極で冬にCO2が凍結することを証明し、さらに大気 と極冠との間のCO2交換によって火星大気圧が大きく変動することを予想した。実 際その後のVikingの観測によって、火星の大気圧が年間約25%も変動することが解 析の結果示された。しかし同時に火星の永久極冠のうち、北極冠にはCO2 iceが含 まれていないのに対し、 南極冠には含まれていることが地表面温度の測定結果か ら示された。これは南北両極で、夏にはCO2 iceはすべて昇華してしまうという Leighton and Murrayモデルの結果とは矛盾することになる。さらに南半球の夏は 火星の公転軌道で言えば近日点にあたり、 したがって南半球の夏の方が北半球の 夏よりも太陽からの入射エネルギーが多い。つまりCO2 iceが南極に残って、北極 に残らないのは公転軌道から考えても矛盾することになるのである。 この疑問を 解決するために二つの要因を考えた。 一つは南半球の夏に発生するダストストー ムの影響である。これによって太陽放射が吸収され、 地表面温度が上がりにくく なると考えられる。二つ目は南北半球の地表面アルベドの違いである。 南半球の 地表面アルベドが北半球よりも高ければ、 それだけ地表面が吸収する太陽放射も 減少し、したがって地表面温度が上がるのを妨げるというシナリオが考えられる。 この原因を特定するため一次元の熱収支モデルをつかって、 極冠の季節変動をシ ミュレーションした。その結果、 いまのところ観測によって明らかになっている 火星大気中のダスト量では南極にCO2 iceを残すことはできず、地表面アルベドの 違いの方が有効であることがわかった。 # 諸事情により、変更や追加のある場合があります。 # 話題希望要望サポーター、大募集中です セミナー幹事:横畠徳太