$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 森羅万象セミナー 第 55 回 http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~sinra/ $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 日時 2001 年 8 月 9 日 (木) 14:00 〜 16:00 場所 理学部 5号館 201号室 橋本 明弘 (北海道大学理学研究科地球惑星科学専攻) 『対流雲の発達段階と雨滴粒径分布の関係』 [講演要旨] 日常的になじみのある「降雨強度 (mm/h)」は、地表に降って来た雨滴一つ一 つの体積を合計し、測定面積と時間で割った値なので、雨の時に大気中を下降し てくる雨滴の大きさや数といった情報は、降雨強度の実況 (レーダーアメダス合 成図等) の精度を上げるために大変重要である。雨滴の大きさや数を表す雨滴粒 径分布 (雨滴粒径の度数分布) の分布形は一般に降雨強度と強い相関をもってい るので、従来その形成過程の如何に関わらず、降水強度のみの関数として取り扱 われてきたが、最近は対流性降雨と層状性降雨などの降雨形成過程も考慮した形 で取り扱われ始めている。 これに関連して、梅雨期に行った雨滴粒径分布の地上観測のデータから、対流 性降雨中の雨滴粒径分布が、対流雲の発達段階毎に異なる特性をもつという結果 を得た。つまり、対流雲の最盛期と衰退期では、雨滴粒径分布の降雨強度に対す る応答の仕方が異なっていた。これは対流雲の一生の中で降雨形成過程が変化し、 それに伴って雨滴粒径分布の特性も変化したと想像できる。 降雨が形成される際には、雨滴同士の衝突併合や分裂、落下速度差による降り 分け等様々な微物理過程が関わっているが、上のような観測結果を解釈するため に、これら微物理過程に特化した雲モデルを用いて対流雲の発達段階と雨滴粒径 分布との関係を調べた。 作成した雲モデルは、力学過程を単純化する代りに雨滴のサイズ毎に雨滴数濃 度を予報でき、微物理過程の効果を抽出できる。この雲モデルを用いた数値実験 の結果、雨滴同士の衝突併合・分裂と雨滴の落下速度差による降り分けの2つの 過程のうち、最盛期では前者が卓越し、衰退期では後者が卓越していた。このよ うな微物理過程の違いによって生じる粒径分布の差異について、あるいは、雲モ デル自体についてディスカッションできれば幸いです。 # 諸事情により、変更や追加のある場合があります。 # 話題希望要望サポーター、大募集中です セミナー幹事:横畠徳太