十二時
《十二時》

   申の時
入湯の始り拍子木は打ねと相撲部やにひとし脛の白きを露して風呂の内外に並ぶ諸妓の裸の棚おろしにしてふるひつかるゝあり又思ひの外に顔にも似やで唐黍団子に相譲らぬあり情け所の磨に一掬の塩を用るは蛸烏賊の料理に似たれとゴボンゴボンの一鳴にはいかなる臭気も遠ざくへし婦人の嗜は一統かくもありたし譬は尋常の婦人の貝光若は尋常の貝光若にして妓婦の貝光若は唐山の貝光若なるべしそのうるはしきも亦むへならずや頭頂より脚の爪先まて磨き入れの奇麗は閑暇に任た気くばり也商売からの嗜かく手入の行届きたるにおしむべしねぢ金の如き小便を出すはいかにしても本意なき心地ぞせらる此所より小便無用の制札でも立たし出口の君に拝礼めされたる高僧やあるなれはおろか三拝九拝なすともたれかは辞せむ浴衣に風を入るゝ散髪是を部やに見んより楼上の玉簾の下に見ばまた一倍のながめなるへし
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坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp