色里三所世帯
《色里三所世帯巻上》目録

色里三所世帯    巻上
 京
  目録
 
恋に関有女相撲
   ゑようがあまつて独りころびの男
   見えた見えた智恵のない所が

《色里三所世帯巻上》

 
恋に関有女ずまひ
年中世の万に気を付て何かなと思ふ人のいへり。花紅葉月雪も朝から暮るまでハ詠めにあきて首の骨いためり。常住見ても美女ハ名木雨にいたます。 嵐にちらず。然も夜ひるの盛とて都の東山岡崎といふ所に。いまだ廿五に一とせたらぬ男の若隠居かまへ黒谷ちかけれ共仏の道を嫌ひ親の精進日さへさらりとあげて。 哥のさま鞠にも心をよせず。たゝ人のもてあそびハ女道と思ひ入金銀有にまかせて酒淫美色に身をかためうきよの外右衛門と申ならハせり人のまじハりやめて盆も正月もしらす表門に男の出入かたく関を居て此番屋に普代の甚内勘六二人の外男といふ者なくて諸事の役人もミな女のさハきにして。 二十四人色作りの女にたハふれ我まゝなる遊楽。王城の思ひ出にハ誰とがむる事なく又上もなき奢ぞかし。されバ天子に后十二人諸侯に七人の艶女大夫に三人の愛女諸士に二人の戯妾あるに極れり。 此外凡人ハ一人の妻を定て子孫の絶ぬたのしミをなす事なり。なんぞ仕合にもとづき物毎自由なれバとて。色かへ品替心を替て京と武蔵と難波に民の竈の三所世帯をかまへ。 さまさま情をかけ持かねのわらんぢにても追付足のつゞくまじき事を外より見てになげきぬ京ハ山水の沢さんなる所なれ共。此水へりてハ取かへしのなかりき。 無分別に異見のいひ手なく。日毎に慰ミかへて折ふし秋のはじめなるに女すまひをもよほしけるに。広庭に四本柱くれなゐの絹に巻立。 土俵に小ふとんの数をならべ加茂川のしやれ砂をふるハせてまかせ。美女に男のすなる純子ふたへまハりの下帯をさせ。 いやながら丸裸にして西ひがしの方屋にならべ置ぬ。そうじて人のはだへハさハり有て昼中にハ見ぐるしかりきに。此女中いつれかひとり身のうちに蚤の喰所もなく腰つきよハからずして肉のりて。 つよいさかりの面影さてもとうと過て是ぞ恋の力草。根つよき男もつゐにハなげころされんとぞ思ふ。先ひがしの方大関にちゞミ髪のおけん。今年廿一才いか成人にてもあげておとして四手のえ物なり。 関脇に素の小雪是ハすこし首筋自慢それよりつゝきて大津の十七小さん。二皮目のおつや。ものこしよしのお丹。桜色の音羽。後帯のお亀。歩上手のお半。 殿中の宇治。琴好のお松。我おとらじとちから足ふめバ。又にしの方より大関にびくに落のるり。其年卅一なれ共見た所二十二三。かくれもなき手取者はづかしげさつておどり出れバ。 関脇に指切の白玉。是ハ諸分しりの女なり。是におしならびて誓紙やぶりのお沢。男にくミのお嵯峨。後家姿のお島。鶉のおあき。飛あがりのおりん。暇の状のお国。いづれも四十八手の外よい手を知たる女。 力も入ずして男をなげる事を得たり。され共けふハたがひに女中立合の本のおすまひ。行司ハ旦那殿。ミぢん勝負のひいきなしに分られ。房付団に恋風をふくませ。立ゑぼしにくゝり袴。 既に脇明より前すまふをはじめ。三番かちの方へ長枕釣よぎをほうびに給ハり。其夜ハ旦那のおなりとあれバ。如在なく足の指をそらし。手のつゞく程ハしめあひ。 諸息のかよひ腰のひねり。爰が大事所。をしやわれになつてぞしまひける。是が今日の御遊山の芝居やふり
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坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp