| 近江 | さもそうづ。さもありなん。然し河津を討たるは。主人祐経様ではない。股野の五郎景久なるハ。 |
| 箱王 祐成 | なんと。 |
| ト大小入り合方に成り。 | |
| 近江 | 思いぞ出づる其時は。安元二年神無月。十日余りの事なりしが。伊豆相模の若殿の原。赤沢山の晴れ角力。 股野は聞ゆる力強。二十壱番勝に乗り。 |
| 八幡 | 広言吐きしを憎しと。祐康土俵へ飛入って。股野を投し河津掛け。既に角力もそれまでにて。あっぱれ力者の祐康と。勝誇ったる帰り足。 |
| (中略) | |
| ちょこ | コレおちょぼ。昨日買に来たのは大坂か。 |
| ちょぼ | 何。江戸の両国さ。 |
| ちょこ | 江戸ならどふぞ行たいものだ。 |
| ちょぼ | 行たいと言ったとて。外聞の悪い。お前とわたしと角力を取って。投られる度に岩戸お見せろと。わたしゃ恥づかしくって厭だよ。 |
| ちょこ | そいつアいゝじゃアねへか。見物より俺が楽しみだ。 |
| ちょぼ | 助平な事を言いなさんな。毎晩見ているくせに。 |
| ちょこ | 何ンにしろ。いゝ加減に出かけよふぜ。 |
| ちょぼ | ほんに雑用斗り溜っていかないよ。 |
| ちょこ | サア。早くお祭りへ参って来よふ。 |