亮々草紙
《亮々草紙二の巻》

   犢鼻 四辻
著聞集に坊門大納言忠信交野の御狩に一六といふ馬にのりて鹿を逐て淀川に乗入られて水練のめでたかりし事を云たる所にかやうの用意にやかねてたふさきをなんかゝれたりける云々又同書に鎌倉右大将家にて畠山庄司次郎と長居といへる大力との相撲の所に長居は庭に床子に尻かけて候けるそれもたちてたふさきかきてねり出たり云々とあり今俗にをかくといへる詞はこれ也これも同書に中納言伊実卿腹くしりといふ相撲と立合れける所の文に腹くじりが四辻をとりて前へつよくひかれたりければ頭もをれぬばかりに覚えてやがてうつぶしにたふれにけり云々今犢鼻の尻の上にて結はれたる所をみつひといふは三結の省けなるべしさて其結目は上に角出たれば四辻ともいふべく覚ゆすまひの手に三結とるといふ事あれば今こゝに四辻をとりてといへる似つかはしげ也当時の犢鼻のかたはしらねど猶さるさましたる所のありしなるべし裸にて相撲とる事栄花物語にもみえたり
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坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp