| ○ | 谷風柁之助となんいふ相撲をわざにするものありけり。たけたかく力つよくて。身の重さ五十貫ありとぞ。 ある年大阪へ行に。大井川にてこさせてといへば。所のものこす事を業とするもの来りて。こして参らせんといふ。おこなる事いふ。 いかでひとりの力にてかなひなんといへば。のりてみ給へとて首出しければ。あまりのにくさにおもくしてと思ふて。首にうち乗たるを。 やすやすと腰うちのばしてかの大河をこしけり。川中にていかにも人にはあるまじとおもひておそろしかりしが。此者いふ。 人はおもきといへども活物なればおびやすしとて。何の苦もなくこしけるとて。谷風直にかたりぬるとてきゝし人語りけり。 わざの馴しものこそまた理外なれ。この柁之助相撲も第一なりし。ちかき頃死けるにぞ。相撲みる人も半ば減じけるとぞ。 |