辰巳之園
《辰巳之園》
春風は。花のあたりを。除て吹。心つからや。うつろふと見む。上野飛鳥の花盛リ。
日暮里の風景。所々賑なる折から如月半の頃茅場丁。薬師如来の参詣。おひたゞしき郡集の中に。芸者八丈の羽織に。
黒
の小袖。八丈代り縞の下着八反掛の。立横縞の帯。鼻紙袋小菊三ツ折。
丸角やが骨折の。利休形。髪は本多にあらす茶洗坊にあらす出す入らすの。男女好と結。雪駄は鼠
の下り皮。
細身の脇指をさして。伊勢やか床机に。腰を懸る伊勢や女房志厚さん。きついお見限りて。
こさりやす志厚此間は石燕か花の会に屋舗に鞠がありやして。散々にわか気づめてぶらぶら心。
是ではいかんと。親玉隠れのちよんの間と。でかけやした女房それはきつい御心労。
今日もおさへかへ志厚久しふりたに。鳥渡参ろふかと。思ひやす女房おはやう。
御帰リなさりやせ咄しの内に髪を。大本多に結。飛八丈の。
小袖の少しよごれたるに。黒繻子の袖口に。幅せまの帯に小短大小を。落指にさして。山岡頭巾を。横丁にかむり。日和下駄をはき。
大キなる顔にて来る志厚かみさん見ねエ凄ひ男だ女房まだぬしを。
知りなんせんか。如雷様とか云て。てヱてヱやかましのしや。
こざりやせん裏門の方より御国衆とみへて。花色小袖に。浅黄裏を付。洗ひはけたる。黄むくの下着。
黒沙綾の帯に。郡内縞の袷羽織に。海黄の裏を附。袖頭巾をぴらぴらとかむり。尻をぢんぢんばしよりにして。き木綿の足袋に。
わら草履をはき大小を閂指にさして。もへ黄羅紗の。柄袋を掛ケて。楊枝屋の娘の美に。気をとられ。
傘の沢山なるに。きやうをさまし。猪牙船の早きに。おとろき。金魚の数に。あきれ。植木の青々としたるに。目を覚し。楊弓の。
カツチリちりりんに。胸をひくつかせからくりの太鞁に。きをぬかれて。大キなる鼻紙袋の。
落そふなも知らす。うかうかと。来掛り。如雷が顔を見ると。きよろきよろ顔にて。袖頭巾を取て貴公にわ。
いつかたへお越なさる如雷こりやアめつらしいぬしやア。
独りか新五左ヱ門イヤ下拙も。はつの出府ゆへ。方角もぞんぜす。薬師とやらが。
今日は賑じやと。福才老のすゝめにまかせ。賑な町を。通りぬけて。漸々尋て。参りました如雷そんな事なら。
連立て。来よふものを。とふた。此賑事はおそろか新五左ヱ門いやはや。とつぴやうしもねヱ。
こんだアむし如雷主は。なんと深川え。
いくきはなしか新五左ヱ門とこへなりと。行ますべい如雷そんならもつと。
身重をして来やうものを。イヽ知たやつらに逢たら。づい隠れの。ずいにげにしやう。ちつと用もあれと。用事流しの。
ちよんの間遊ひと出やう。船に乗ふか。日本橋へは遠し。江戸橋の田村やにしやうか。但し西村のおさよか所で乗ふか。いやいや此間大和やの息子と乗た。
渡し場の中村屋にしやう。新さんこつちへ。きなこ餅きなこ餅新五左ヱ門そつちへ行のかへ是より如雷新五左ヱ門を連て鎧の渡しの方へ行中村やにてセントウ次郎船か船か如雷なんの事た。
船か船かと他人がましくするな次郎ついそ来ぬ客なれなれしくするを上手ものなれはなしみ顔に是はお見違もふしました。
おちやどんお茶を上ねヱセントウ長吉そんならおれはいつて来よふ。
イヤ稲荷堀は何番か出たな次郎七百廿一とでた長吉なむさん。
薬師のもかきを喰。此頃は七百六百か。いゝわへ次郎今日はとこへ行長吉九十九里の。
旅人のしまいが有次郎早くしまふたらめくりをうとふ長吉後に後に如雷あいつはとこの船印じや次郎横丁の。
西村におりやす如雷西村の船頭か。あいつも見わすれたそふな。きつく年寄になつたそふな女つや茶を持て来る如雷イヤ美しくなつた。久しく見ぬが。とんだ茶かまに成おつた。
どふだ地色でも出来たか知らぬ客ゆへ気味をわるかり勝手へ行は引替女房出る女房やう御出遊しました。先御上り遊しませ。次郎とん。船を。
はやく拵さつしやい如雷たはこ呑付る女房火入へ手をあてお火かこざりますかな如雷ありやすありやす次郎かみさん。仲丁の亀山への。
文かありやせう女房今見てやろふ。船をはやく拵な船頭次郎火縄箱なと手に持てくわへきせるにて船場の方へ行女房是次郎どん。
くわへきせるはあぶないによ次郎アイ 女房此間に勝手へ行て状箱を尋る如雷手拭を出して顔をふく如雷新五左。かならず。
つきな事を云まいそ新五左ヱ門何サ。おれらも。いなかじや。お女郎買た。今度も。軽井沢であそんたら。峠まで。おくつてなむし。お帰りにやア。かならすよらしやりませと。くれくれ云て。
大もてて有た如雷なんの事た。人が聞。そんな事は御免だ御免だ次郎船が出来やしや女房勝手よりふねか出来ました。
お出遊しますか如雷さあ新さんめヱり。やせうイヤかみさん女に。西宮か所の。長唄を。買にやつて。
くんねア女房ハイ。つや新六さんの所へいつて。めりやすを。
買ふてきや如雷ふところより銭を出しはやくかつて来。
くれ木川岸川岸つやはめり買に行女房先に立て如雷新五左ヱ門船へ行次郎さアめしませ如雷船へ乗る新さん乗やすそ新五左ヱ門猪牙は初而乗はやうやうとりつきとりつき アヽこりやア。
ぶ細工なもんだ如雷ころひでもせまひぞ。独りでころんでぬれるやつと。出まひぞ次郎うそわねヱ。もしかみさん。
船縄をとひておくんなんせ女房先ちつと待な。めりやすかくる下女つやめりやすを買いそかしそふかけて来る女朧月と。五色丹前を。
買て参りやした如雷ヲヽきまり。すひめ。重さんどうでも。
はだしじやはだしじや女房船のへ先を持て押出スお帰りに。
おより遊せ如雷アイいつて。めヱりやせう女房イヤ次郎どん。
白木やの清助さんの。文を次郎夫々。そつからなけて。おくんなんし女房そんなら。なけるによ。
そりや次郎おつと来やした文をふところへ入船はよほと出る次郎とりかちとりかち。やんわりとやんわりと。
ヱヽべらぼう。跡先。見てこげ如雷新ほう此新川筋の。蔵ともを。見やれ。是か皆。
酒だによ新五左ヱ門大けなものしや如雷是より又油堀の。孫兵衛か。貸蔵が。
見せたい新五左ヱ門孫兵衛とは如雷国でも。知つてゐる。親和が事さ。三ツ井孫兵衛と云ては。
手跡はよし。金は沢山あり。孫兵衛さんの事だ船は永代橋の近所へ行次郎もし旦那。
お頭巾如雷頭巾取て新さん頭巾を。とりねヱ新五左ヱ門頭巾をなせ取如雷爰は。
船改の。番所た。見ねヱ。暮方からは。是に火を灯す。此橋が。永代橋と云のた。橋下から。見へるか。仙台川岸。こちらの。火の見の下を。這入と。八幡の裏。二軒茶や。櫓下なとへ。
行て新五左ヱ門櫓下とやらは。国元ての咄しには。焼たと聞たが如雷焼たとて。出来ねヱて。なるものか。仲丁も焼たか。
立派に建た。櫓下なとは。前かたは。隠し窓て。あつたか。惣格子になつて。すとんだもんだ。土橋斗。焼なんたが。又焼たから。焼ぼこりと。やらで又。立派に。
出来やう新五左ヱ門此ちよぴりと。した所は。なんじやへ如雷是は八左ヱ門島と云。此向か。
佃島新五左ヱ門こゝにも有か如雷イヤ爰は。猟師斗居る。女郎の有は。
八幡の向のさ。新地も近し。石場もちかけれと。新地なとは。下卑じやて。のう船しう次郎イヤ其やうに。
きたなくも。こさりやせん。しんちの播磨や。なとは。よくいたしますよ。子供は。揃ふて居るなり。女共も。能いたします。
ちと御出なんし如雷こいつは。播磨やに。色が有な。もうせんても。かふるな次郎つがもねヱ。そんな事。するのじや。こさりやせん。旦那どこへ。
御出なんす如雷されは。どこかよかろふ。仲丁にしやうか。土橋にしやうか。河辺の娘が。半四郎を。まねるも。久しもんた。山本にしやうか。山本は腹かちいさいから。
尾花やにしやう次郎いつそ。亀山へ。御出なんせ如雷イヽヤ小花や小花や次郎稲葉や。おなじみなら。
先へお出なんし如雷さ新さん。あがんねヱ新五左ヱ門早いもんだ。夢のやうに。
きた如雷そんなら。先へ行ぞ。新さん。こつちへきねヱ 如雷と新五左ヱ門新道より小花やへ行又猪牙来り川岸へ付セントウ忠五亀山亀山。
ヱヽふ景気な。亀山亀山やうやう亀山にて聞付て女来る女忠五どん御苦労。蝶郷さん。
お出なんした蝶郷此間は。御世話女御影ケで。おもしろふ。芝居を。
見やした蝶郷これは。御礼で伊丹。諸白蝶郷は女と連立て亀山へ行忠五船をしまいて忠五是々。次郎そしらぬ。
顔をするな次郎とふた。忠五久しいの。いゝ事てもあるか忠五とんと。いけねヱ。ゆふへも。屋形に。能のか有から。いたりや。手ふりあみ笠に。
なつた次郎おいらも。裾つきの丁子やで。めくりを打て。六七百まけて。夫からおもての。春岡て。こまか有から。廻したら半分斗。
まけはかへつた忠五そりやアまつよかつた。なんとそつちの吉は。どこにいるの次郎此間聞は。のぶと船を。乗ると。聞たかついそ。
見掛ねヱ忠五あいつも。いけねヱ唐茄子だよ次郎とうなすだか。茶がまだか。わからねヱやろうたよ。客が。まつていやう。
後に来やれ忠五どのやうな。客じや次郎何だか。雨落の。きしやご。見たやうに。しやれのめすよ忠五そんなやつも。苦界三年と。附合て。勤たが。
いゝ次郎のちにのちに次郎は新道より小花やへ行忠五は船をしまふ小花屋娘お中とふだ。次郎どん。きついものたねヱ。前の。お松どんが。
居ねヱけりや。亀山へ斗。いきなさるな次郎こりやア。めいわく。客衆さへ。来やうと云は。
いつても参りやすお中うそヲつきねヱ 咄しの内に奥より女来りお中さん。志厚さんの。
鳥渡きねヱとお中横座舗でかお中は座舗へ行次郎も勝手の火にまたかつてあたる料理番も客大勢ゆへいそかしそふに料理番八助どん。水を。
頼やすぞ。八助アイ水汲も。てヱてヱではねヱ料理番おまつどん。硯蓋。持て行ねヱ。奥へまだ吸物が。
でるによ客四五人来る若イ者料理番お中さん。お松どん。お客かあるに女是は。五郎兵衛さん。
よう御出なんした五郎兵衛けふは御屋舗から。御出遊した。随分麁末の。ないやうに女あいあい。さあ。こつちへ。
御出なんし五郎兵衛旦那。お上り遊せ客はのこらす奥座敷へ行客の風躰は。御大名の。勝手用人とも。云かつこふにて。お納戸茶。羽二重の。小袖に。浅黄。
むくの下帯。茶色の帯。立派なる。大小にて。京扇子を。はちさせ。髪を合せひんにて。元結を。四角に巻。宗十郎頭巾を持来る。跡につゝいて。弐人来る。是は勝手用人の。下役手代と。云なりの男ふりにて。
郡内縞の。綿入羽織に。小紋の秩父絹の小袖。独りは。太織の羽織に。上田縞の小袖。はるか跡より。綫留の布子に。小伯縞の帯。手に海黄縞の。風呂敷を持。勝手に。居やうと。
するを客これこれ長助。酒でものみやれ長助ハイ 跡について行是は勝手用人の小使手附中間なるべし五人なから。
座舗へ行客さあ。みんな平に平に四人ハイヽ 此間にたはこぼんなと出る客是々。屋敷はやしき。爰はこゝしや。
平にし給へ四人ハイ 女鉢肴硯ふた出る娘お中てうし持来る五郎兵衛旦那。
壱つ召上られませふ客しからは。初て一ツ盃のみて次の男へさす次の男伝六殿。
お先へ酒を呑所へ女来り女五郎兵衛さん。お百さんは。さして居なさり。
やせん五郎兵衛アヽたれこれはねヱ。美しいのを。揃てたのみやす客是は。ざんねんびんしけん。五郎兵かお馴染を。見やうと思ふたら五郎兵衛又旦那。
悪口斗吸物出る女郎あね来る障子のかけより小声ニ女郎お中さんお中サアきねヱ 女郎四人来りて並ふ客一盃呑て女に渡す女盃を上座の女郎ニ渡ス女郎盃を横にまけてちつと斗呑て女に渡ス女は次の男へ盃を持行次の男呑て小声になりて三人目へといふて女に渡す女三人目へ持行女郎呑て女に渡す又女三人目の男に盃渡ス三人目の男呑て女に渡す女二人目の女郎に盃差ス女郎呑て五郎兵衛へ盃来る五郎兵衛はさしつめ四人目の新造へきまる客長助長助。どこへなと。
いつて楽め楽め長助イヱ御酒戴たで。やうごさります五郎兵衛西宮の船頭と。堂前の。
あぶらやへいかんせ長助イヱモ客いけいけ五郎兵衛サアサア 無理に長介をひつたて船頭と一ツ所に堂前へやる五郎兵衛賑に芸者を。呼ませう是おまつどん。
たれぞ頼やす女羽織に。しやせうか。男芸者に。しやせうか五郎兵衛梅大夫が。よかろふお中おまつどん。梅大夫さんを。
聞にやりねヱ女アイ 女は梅大夫呼に行跡は女郎と客別々になり座も少ししらけて居る所へ梅大夫来る梅大夫是は。五郎兵衛さん。
お久しぶりで五郎兵衛間違。久しうお出会も。致ぬ。山てのんだ。まゝかな梅大夫左様さ。宮本いらいで。
こさります客ちかづのため。さそう梅大夫是は。ありかたふ。そんじます五郎兵衛なんぞ。面白ひものを。
頼やす梅大夫風流の。馬士ぶしを。お聞なされましたか五郎兵衛よかろふよかろふ梅大夫豊丸さん調子を。合せねヱ豊丸よしよし梅大夫鼻をかみせきばらいなどする座頭豊丸三味ニかゝる梅大夫ヱヘン△うたいわ知らず。儀大夫は。しらぬわれらか。ふつゝかに。唄は元より。しら糸の。
難波のお中五郎兵衛さんへ。梅大夫さんに。此間はやる。おいらを狐か。はらませたと云。唄を。あて身ふりを。させなんせ五郎兵衛梅さん梅さん。狐がはらませたに。
しなさい梅大夫ハイこいつは。ちとつらいねヱ客しよもうしよもう梅大夫せひなく狐の身ふりをする梅大夫豊丸さん。
うたいねヱ ツヽテンテン△おいらを狐が。はらませて。御亭になろとは。わしや。やです。やですやです。やでもです。しんぢつやあでは。なけれとも。人目はつかしけりや。わしややです。やですと云事は。いわねヱもんです大勢ハヽア客是は一ツ興一ツ興。
一ツ盃のみ給へ梅大夫これはこれは盃をいたゝくお中酒をつぐおつと。ござんすござんすお中梅大夫さんの。久しい。
もんだ梅大夫いやもう。とんと。酒が。いけやせん。ゆふべも。二見やで。拳酒の。相手をしたりや。声は。大ヱなしに。
なりやした五郎兵衛一ツ斗は。よかろふ梅大夫イヱ一ツござります女五郎兵衛さん。ちとあちらへ。
お出なんし五郎兵衛なるほとなるほと旦那ちと。お休遊せ客少しめれんのていに見へて ウヽ先々お中お松梅大夫口揃てちとげしなり。ませ五郎兵衛始客はみなみな床へ行女郎梅大夫さん。つき出しの。子と。一チ座。
しなさつたか梅大夫イヽヱ。一チ座はいたしやせんが。此間中川て。後から。見掛やした女郎すかねヱ。
子だがねヱお中まだなれねヱからさ女郎いけるのじやねヱ梅大夫おかんさんの。くさすも。
久しいもんだ大勢口をそろへて アヽらつちもねヱ みなみな床へ行客床にて小声に客此さゝら。さつと捨てさそふらへはアヽプウ 女郎来り客そらねいる女郎もしもし客アヽきつく酔ふた女郎たはこのみて客にのみ付て出ス客これはこれはたはこのむ一チ座の女郎三人なから来あなた。お休なんし。
おかんさんお休なんし女郎アイお休なんし皆々床へ行お勘ひやうぶ引まわしてまだ。お寒ふこさりやすねヱ客されは朝晩は。
はた寒ひなとゝいひて色々おもしろき仕打有隣座舗 如雷新ぼう面白イか新五左ヱ門田舎とはちかつたものだといゝなからやま半紙を出して鼻をかむ如雷是々。主の紙はそでねヱ。
小菊にしねヱ。小菊を買ふなら。馬喰丁の上総や。五郎兵衛が所が。いゝ。たはこも。両に四斤くらいの。国府かいゝによ。匂ひ袋の。やうなものはな。室町の。桐山三了が。所からとりねヱ。又きせる張せるなら。池の端より米沢丁の村田が。所かいゝ。主は誹諧もすこ。
やらかしたな新五左ヱ門国て。ちつと斗して見たが如雷そんなら宗匠へ。弟子入をしねヱ。存義ても。金羅でも。祇徳在転なりと。湖十なとも。よし。菊堂なりと。気の有にしねヱ。みなおいらか。心安。するからつい。出来るこつた。朱肉や。唐墨の。やうなものは。
古梅園か。所から。通てとつて。やろうろう石を。買なら。四日市より。親父橋の。弥五郎が所で。買ねヱ。筆も思恭か。流なら。御成小路の。せんちんしと云か。
有新五左ヱ門そんな事より。三味線か。ならいたいものた如雷そりやア。なをなを安ひ。こつた。儀大夫三味線なら。五八ても。富八でも。豊後なら。文字豊でも。文字久なりと。芳丁の。竹沢園も。
よし新五左ヱ門文字清と。やらは。どふしたの如雷何文字清か。今ては。中村秀松か。女房になつて。子を持て。かみさんかぶだ新五左ヱ門とこに居るの如雷川岸の。富田屋と云のが。
そだ新五左ヱ門役者が。茶やをするかの如雷するの段か高麗蔵が内は。こうらいやとゆふ。芳丁に西川重三郎と云。人形遣ひ。ぞうしがへやと云て有。其外に中村や。島五郎。万屋新万や。竹伊勢と云は。伊勢大夫が内じや。鹿の子餅は。又太郎が見世。向の角の八百屋は。大谷広右ヱ門。
いつくらも此類かあるしつたぢまんに色々の事咄ス所へ女郎来るお長是おとよさん。ゆふべはねヱお豊面白かつた。ねヱ如雷どこてお豊梅本でさ如雷梅本は。
ごうせいな。もんだ櫓下なとは。のこらず。梅本の地だ。根津にも。店があり。芳町では。子供屋也お長豊国さんの。
内だねヱ如雷豊国を。どふして知つて。居るお長いつそや。拳角力の時。出なさつた。ねヱお豊それそれ。
梅の紋を付て如雷豊国が。拳ときては。凄ひもんだ新五左ヱ門日が暮じやねヱかお豊また七ツ過で。ござりやせう障子引たてひやうふ引廻しお長さん。お休なんし廊下ばたばたと女お長さんお長さん。ちよつと。
きねヱお長何ンたヱ お長はしこきのなりにて出る女志厚様が。きなさつたにお長見通しにか女イヽヱ横座舗でお長横座舗へ行如雷は気を廻し廊下に立聞するお長お前は。さつき。
来なさつたじやねヱか志厚裏の関口に。清兵衛や。忠公が。居るゆへ。付合に。今迄居たお長又おいかさんを。呼なさつたか志厚おいかは。
脇へ出たお長聞にやるやつさ志厚帰りそふもねヱかお長武サだから泊りは。しやせん志厚そんならまた裏へでも。いつて来よふお長何サ。かみさんの部やにでも。
寐て居なさりやせ志厚それも。久しい。もんだお長なんでも。まつて。居ねヱ お長は出て行如雷は廊下にふらふらして居お長なぜそこに。居なさり。
やす如雷酒に。酔たから寐所へ行すめぬ顔つきにて唄ふ△かあい男に。逢ふ時は。すかぬ。こちらか。しこなしに又女来りて障子こしに女お長さん。あけてもよしかお長なんたねヱ。
明ねヱ女セケントコノヲコヒキノ。カヽネケヲ。トコリキニ。キツタお長イキマカニ。シキコヽウクサカンカガ。モコツテ。クヽルクカヽラカ。ソコレケマカテケト。イキウクテ。クヽレケ。ナカサカイキ女そう云。
やすよ女障子引立帰る又間もなく来り女お長さん。鳥渡きねヱお長なんだのお長は出て行如雷てうしの口より酒をのむお長ヲヽ能呼事だと云てお長床へ入ル如雷まじめになりてすめぬ顔にて居るお長心付いていろいろとつとめるお長たばこ。のみなさり。
やせんか如雷返事もせすにらみ付て居るお長お前の。顔にやア。何かきつく出来。やしたねヱ。是にやア和国橋の。実路孝を。
付なさりやアいゝ如雷そりやア。色男の。する事だお長指にて如雷か顔をつきなからお長お前ほと。色男なりやアいゝ如雷何ンの事た。此ふんばりめは。いゝかと。おもつて。
喰のめすなといゝなから手を打お中あいゝ如雷是お中さんとやら。此売買女。さけて。くんねヱお中どうなされます如雷あんまり。心いゝとおもつて。何ンのかのと。茶にし。やアがる。其上野郎の。根づけを。見るやうに。蒲団と。おれ斗置て。廊下斗。
そゝりやアがるお中お長さん。お前も。どこへ行なさつたお長どつこへも。行はし。やせんが。隣座敷て。煙草のんた斗さ如雷何ンだ。こいつは。うぬがいゝやうな。事斗。
打殺されんな硯ふたをふり上るお中お長さん。お前はあつちへ。いきねヱ お長は勝手へ行女共来る新五左ヱ門帯とりはたかにて出ル新五左ヱ門どふだどふだ如雷マアきゝねヱ。
ぬしも知つて。居る通りだ。其上。今も。隣て。煙草のんたの。馬を呑たのと。おれが目をば。こんぺいとうの。附目。太鞁二だと。思ふそふな。人を附にした皆口を揃て何サ。あの子も。そのやうに。悪敷する。気もねエけれど如雷何ンた。うぬらまて。上ケ下ケを。
取な次郎勝手より聞つけ飛んで来る次郎とふで。ごさります。あの子が。気にいらざア。外の子でも。お呼なんし。先。気直シに。ひとつお上りなんし如雷爰の。どぶ酒が。くらわれるものかといゝなから大さらをほふり出ス次郎新五左ヱ門やうやうたきとめけれは如雷ぬし達は。どこへ連て行。此分じや。男が。
たゝねヱ次郎そんな事いわすと。佃の。ひがしやへても。行ませふ新五左ヱ門いやもう直に。帰ろふ。門かやかましひ如雷門が。どふするもんだ。喰付はしよまひ次郎それでも。主が。気をつかい。なさりやす如雷気を。つかつても。いゝ。打捨ておけ。煤掃には。
出る次郎まあ。なんでも。お出なんし漸々とたまし二人して船場の方へ行若イ者どふもいけねヱ。客だ志厚とんだ賑な。客じや。お中いゑもふ。いけるのじや。ごさり。やせんサア二階へ。
お出なんしお長お中志厚三人二階へ行お長お中さん揃た。とんちきだねヱお中お前が。何ンのかのと。云なさるからわたしや。そばで。気をもみ。やした志厚野郎買と。見へるおまつ来りて女わたしも。芳町の。俵屋にも。居やす。新道の。二文字やにも。三四年居やしたが。あのやうな。若衆買は。
見やせん志厚ひやうたくれ。ゆふてくの。揃ひたお長お中口を揃へてついぞねヱお中お松志厚さん。お長さん。お休なんし志厚もちつと。咄シねヱお中お松後にめヱり。
やせうお中お松勝手へ行お長障子を引立てお長忠兵衛様ン清兵衛様ンはまだ関口にかヱ志厚今日はおかるとおりゑと。一チ座して。梅大夫で。さへて。
居たお長お前は。誰を呼なんした志厚誰を呼ものだお長志厚かひさをしたゝかつねりなからお長さあ。いゝねヱいゝねヱ志厚アヽいおういおうお長誰を。
呼なんした志厚爰からいつた。大坂女郎さお長あの子は。どこに居るねヱ志厚何屋に。居るかお長名は何と云ねヱ志厚おとか云たお長何名を。わすれるものたなとゝいゝて色々面白キしうちことことく有折から廊下はたはたと客どうだ。
又さしかなさしかなお中アイ昼から出て。居なさりやす客又。出ものかお中お前は又。今まてどこに。居なさりやした客表櫓に。居やしたお中表は。永楽屋にかヱ客何サあのやうな。
変化物屋敷へ行ものだお中何。今じや出やしねヱ客尾張やで。珍ひものを。呼やしたお中誰をヱ客このごろ名代の。六部女郎さお中おつな子だねヱ。そして。つれ衆はヱ客外の者は。土橋の。やへ。いつたから。
おれ独りきやしたお中そんなら誰ぞ呼なんし客芸者を。拾人斗。呼んで。くんねヱ女とんだ事云なさる。よしよし。わたしかいゝやうにし。やう客おまつどんで。なけりや。ならねヱ おまつわけいしや呼に行客おいせさんはどうしたねヱお中あの子はねヱ七さんと色をしてねヱかぶつて。
居なさりやす女お松来る女七兵衛さん。こふ呼にやりやした。利中さんと。繁さんと梅大夫さんが。来なさり。やす客よしよし梅大夫豊丸さん。こつちだこつちだこりや七兵衛さんお出なさりました利中座敷へ行と独り角力のまねをする利中すまふとろふ。ならこう繁大夫かないかないかないません。めくめくらに客とんだ事たとんだ。
茶釜梅大夫茶釜茶釜がまがまたりの大臣繁大夫大臣大臣大臣の所へ毛がはへた利中はへたはへたとは物くさ太郎が娘かへ大勢ハヽア梅大夫お肴一トツ。出ます所か中村の。
仲蔵大勢よかろうよかろう梅大夫△皆さまの。御ひひきにて。一チ郎別当と。たいにんしたる。左衛門祐経大勢いよいよお中秀さんとは。おそろしい客繁さん一トツ頼やす利中私が。
出ませう△藤兵衛さんがお花さん。お花さんと。云なさつても。お花さんは。やですやですと。云なさります大勢きつしきつし客聞か聞かヱヘン△こいつはこいつは。これで。やぼなら。しよう事か。
ねヱ繁大夫旦那の。又八は。利中さんのより凄ひはヱ女もし七兵衛さん。誰ぞお呼なんし客今夜は。さへ一ト通りにしやう利中さへ一ト通りの名方。
ホヽホヲ女呼やすよ梅大夫お呼なさるのさ繁大夫呼ねヱ呼ねヱ客さわぎねヱさわぎねヱ 女は女郎呼に行利中豊丸繁大夫梅大夫連ふしにてうとふ△とうなすほとの血のなみた。落て。かぼちやにやアなりやしよまいキタきたきたきたさのさのさの。
讃岐の金ぴら女郎来り障子の外より女郎お中さんお中サアサアきねヱきねヱ 女郎来る七兵衛酒を呑てさす女郎ちと御上ケ申や。せう客まづまづ利中おこうさんには。まだ私は。
間違て女郎ハイ御頼申やす利中是は是は客利中さん。一ツ拳。まいろふ利中サアめヱり。
やせう客ゴウサイ利ロマデヱ客パマ利ロマとつてヱ客キウヤア利トウライとつてヱ客かなわぬかなわぬお長小便に行て隣リ座敷賑なれはそつと見けれは馴染の七兵衛なり名代の女郎居るゆへに客は知らぬふりにて座敷へ行お長おゆるしなんしお中お長さん。
のみねヱ おこう煙草のみ付てお長にやる客盃を持て居けれは客一トツ。あげやうかお長ハイ繁大夫お長さん。中川では。ひどひ目に。合せ。
なさつたねヱ梅大夫何拳かお長煙草のみなからひけをなてるまねしなからお長何。そうもねヱのさお中きせるをふりあけてお長をたゝくまねしてお中髭なての。きんきんか。
にくいのお長イヤいつてめヱりや。しやうあなた。ゆるりと。おこうさん。お中さん。皆様ンこれにお長は床へ行利中問ひませう梅大夫とわしやれとわしやれ利中刀は梅政宗利小袖は梅羽二重利羽織は梅ちりめん利男は梅権右ヱ門利女は梅権介ハヽアまた。
まけた利中どふだ。凄ものか繁大夫変化るで。まいろう利中来給へ。来給へ繁ばけるはばけるは利茶釜は繁やくわんと利息子は繁とつざま利かぼちやは繁とうなす利娘は繁かゝさん利中ハヽアおそろおそろ繁大夫どふだどふだ鐘なるゴンゴン客明るそふな。
帰ふ帰ふ女郎お中口を揃てまだまだ。もちつと。お出なんし梅大夫帰ろぴよこぴよこ三ぴよこぴよこ豊丸三味線引掛繁大夫利中梅大夫△六ぴよこ。七ぴよこ。八ぴよこぴよこ。九のぴよこぴよこ。十ぴよこぴよこ。しよんがヱ引客帰ふ帰ふ繁大夫梅大夫利中もともともまだ。おそくは。ござりません客いやいや。
帰りやせうどやどやと勝手行お中は先へ行てせん頭をおこす船頭船はとふに。
きて居やす客サアサアそんなら。此間におこうお中此間に利中繁大夫梅大夫ハイよう。
お召なさりませ客は船にのり帰る芸者はのこらす勝手に咄して居る隣座舗客手をうつ女ハイヽ客帰るから。五郎兵衛を。
呼てたもれ女ハイ五郎兵衛さん五郎兵衛さん五郎兵衛ヲイヲイ女お帰りなされ。ますと五郎兵衛よしよし。駕籠は来て。
居るかの女アイとふから。待て。居やす五郎兵衛サア伝六さん。新介さん。帰りやすぞ客羽織なと着て座敷へ出伝六新介目を摺なから客眠そふな。
顔じや五郎兵衛お中さん。御酒を持て来て。くれねヱ客酒より帰ろふ帰ろふ客先に立て行跡より女郎不残送る女お腰のものを銘々脇差なとさし駕籠にのる五郎兵衛あとへ立帰り五郎兵衛是。おまつどん。長助さんが来なさつた。なら静に。跡からきねヱと。
云ておくれ女アイアイ女郎四人アイおはゞかり。申やしたお中お松よふ御出。遊しませ客はみなみな帰るよこ座敷にて志厚も目を覚すもふ夜か明たお長けふは。居ても。よかろふ志厚帰らにや。ならねヱ お長帯しめて志厚に羽織なと着せて二人小廊下へ出るお中お帰り。
なんすか志厚此間にめヱり。やせうお中そんなら。船を云付や。しやう志厚船じやアイ目立から歩行かよふござりやす女お帰りなんすかそうりをなおす志厚是ははゞかりはゞかり志厚出て行けれはお長何か用有けにお長志厚さん志厚さん志厚何々志厚立帰るお長及ひこしになりて耳に口を当てナヽ志厚よしよし烏啼 カアカア烏の声に。
目は覚て。残は枕斗なり邯鄲は五拾年是は一チ日一チ夜の楽もきへて跡なき夢となりにけり
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坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp