屠龍工随筆
《屠龍工随筆》

○すまふとは人と人と手してあらそふ事をいふなり。源氏に巻柱の母のむら気になられて髭黒とあらそはれしをすまい給ふと書より。 然るにすまいは体。すたふは用の詞なり。物の名をいふ時は都て体を用るなれば。すまいといふべきをすまふといふは。是にかぎりて常にことたがひたるよふなり。

《屠龍工随筆》

○角力。西の方東の方と名乗べきを。西の方屋東の方屋と名乗るは。推量るに。方屋といふものを東西に分て作りて彼等を別ち置とおもはる。 又物語にかたのすけに申てと書たるは。衛門兵衛佐の其所の役を兼て支配するをいふにや。
○赤沢山にて河津三郎が角力を取時の手綱二筋よつてしめしと曾我物語に書たるは。手綱にはあらず。直に今のまはしなるにや。 足利の代の武家礼式を書たるに。大将に鎧をめさせる次第に。先手綱を云けるは。今の代のまはし褌なり。
○たふさぎは股ふさぎといふ詞にて。袴の少きものにて犢鼻褌の事なり。上古は角力もたふさぎをして狩衣にて取たると見えたり。ふんどしはふみとをしの詞にて。今のまはしなり。
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坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp