遊小僧
《遊小僧第五》

  一 仕形はなしの事
鳩の杖は老たる人のたすけ。目のよきハその身の徳と。八十ばかりの老人。東山に開帳ありと。人をもつれす参詣す。 生れ付てはなしずきの人なり。道々つれがなほしやと。あとさきを見まハしける。折節六十斗の男。是も一人まいりける。 かの老人よき友と思ひ。そなたハ東山へさんけいかととふ。いかにも。それならハ同道いたしませう。 何と。先年石山の開帳ほどにまいりはござらぬの。いかにもさやうでござる。石山にてすまふを見たまふたか。 いかにも見ました。其時若之助が関じやが。左の手をかふあげてといふより咄がうつりて。のふ。すまふ取はすしをよふくふ物でござる。 兎角すしは近江鮒かよふござる。したか。あふミの者はつかひにくふござる。朝おき朝おきからこハ高に物いひまする。 惣して舟人ハわるひ者でござる。あがり場でハ駕をかる共。わらぢをはいたがよふござる。わらぢを仁王にしんずるハ何とした事じや。 されバ盗人は目をぬくといひまする。目をしやうくわんならば鍋焼がよふござらふ。ねぶかをくふてからは神まいりせぬ物じやといひまする。 まことに法花宗は義理がかたふござる。松が崎のをどりは皆花笠をきまする。田うへに笠きたるはしほらしい物じや。 住吉の田植ハ五月廿八日じやといひまする。堺のうらに生た蛸がござる。それに付て。さいぜんのすまふの手ハどふでござる。 いかにも。さまたにあげておとしたといふた。
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坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp