平成十七年三月場所八日目観戦記
そ の 三(平成17年 3月20日)



 土俵に戻ろう。現役最年長一ノ矢は今年も健在、泰然として西花道より入場した。まさしく穏やかに、一見春風駘蕩たる様子すら見えるのだが、 相撲は全く裏腹で、厳しい取り口をもって身上とする。相手は大立象(だいりっしょう)、その突っ張りを受け止めるや右へ去なして崩した。 大立象が向正面を右へ右へ逃げて網打ち気味に振れば、一ノ矢は一気に突っ走って軍配を貰った。 物言いがついて同体取り直し、あとでビデオを見れば、一ノ矢の右足が踏み越しているので無理もないか、というところ。 無論現場では分からないけれど。取り直しでも大立象は突っ張り、次いで頭を下げたが、一ノ矢はさすがに落ち着いている。 左から素首を掻いて快勝して見せた。

 この日は下位の相撲から面白く、ひどい時には三段目あたりの相撲で眠気に襲われることさえあるのに、今回は全くそのようなこともなく、大いに楽しませてもらった。 やたらに高い、しかも両手の喉輪にいって二本差されたりとか、何でこんなところで…という予測不能の大博打的な相撲もたくさん、これも下位ならではと言えようか。

 注目したい力士もたくさんだ。順番に挙げてみよう。まずは不動山。旭天鵬の弟である。兄と違って身長はそんなに高くない。 右四つで随分と攻められたが、下手投げで逆転勝ち。次は蒼國来(蒼は正式には簡体字だが)。相手は鎌倉、筆者が伊勢ノ海部屋で初稽古を見てから 5年、ずいぶん大きくなったものである。 蒼國来は突っ込んで出たが、筈押しで一気に攻め込まれ、巨体をまともに受けて左差しの寄り倒しに完敗してしまった(左下写真)。 次の次の相撲(審判交代を挟む)には、両膝を痛めて後退してしまった玉力道が登場、攻めが高いような印象を受けたが、右の張り差しから出て最後は挟みつけての寄り(右下写真)。 この位置だと力が違う。
(以下次頁)
前頁へ 前画面に戻る 次頁へ

坪田 敦緒 / tsubota@ep.sci.hokudai.ac.jp