4.各研究室のアクティビティー


4.1 化学ラボ

 本年度より、化学ラボ内でイオン交換法による分析元素の化学分離操作を開始した。本年度開発を進めたのは、金属試料からのタングステン・モリブデンの分離であり、オールテフロン製の耐フッ酸カラムを制作し、回収率>90%を得た。実験室全体がクリーンルームでないため、実験室環境からの分析元素の汚染の可能性があるため、全ての化学分離操作はグローブボックス内(クラス100程度)で行い、また試薬の保存、試料の前処理等も全てグローブボックス内で行った。また、グローブボックスは、実験者各人に一つづつ割り当てられ、汚染レベルを分析者確認が責任をもって管理する体制をとっている。

 同位体希釈法による高精度定量分析のために、レニウム、タングステンについて標準溶液を調製した。本年度は、天然および濃縮同位体スパイクについて、それぞれ濃度の不確定性が0.1%、0.5%以下の標準溶液を作成し、いくつかの鉄隕石および金属標準試料(日本鉄鋼協会配布)について定量分析を行った。

4.2 ICP-MSラボ

4.2.1 運転日数

 今年度のPlasmaQuad及びPlasma-54の運転日数は、それぞれ100日、120日であった。装置の故障は、真空計コントローラー(PlasmaQuad)、ターボ後引き用ロータリーポンプ(PlasmaQuad)、およびUVレーザー(LaserProbe)の3件であった。装置及び部屋全体の清掃作業は計3回行った。

4.2.2 今年度のICP-MSラボの進歩

  1. 高感度イオン検出器(AMI-2000)をPlasma-54に装着し、Hf同位体データの取得開始
  2. 岩石中の希土類元素定量分析法の確立(英国サウザンプトン大学・仏グルノーブル大学との共同実験、論文発表)
  3. Plasma-54のイオン引き出し電極および真空インターフェイスの改造(真空ポンプの補強)による感度の向上(×6〜8倍)
  4. 新しいレーザー導入法(Soft Ablation法)の確立(論文発表)
  5. 鉄隕石中のゲルマニウム同位体分析(論文発表)
  6. レーザーによる局所オスミウム同位体分析(論文受理)

4.3 SIMSラボ

4.3.1 運転日数

 今年度の3Fの運転日数は311日で,稼働率は85%であった.この稼働率は一昨年度(85%),昨年度(81%)のものとほぼ等しい.運転停止日数(53日)の内訳は定期保守16日、停電断水14日、故障修理24日である。 今年度の1270の運転日数は271日で,稼働率は74%であった.据え付け初年度としては初期不良による故障が少ない.運転停止日数(94日)の内訳は定期保守20日、停電断水14日、故障修理60日である。

4.3.2 今年度の進歩

  1. カメカIMS-1270の立ち上げ,定常運転化:3月4日に搬入された本装置は4月29日に第一次調整立ち上げが終了し,試用期間に入った.その後,7月17日ー29日にかけて最終的な仕様検査が行われ,7月30日より本格的運用に入った.一次イオン系分析部が導入された.
  2. 新設計固体イオン検出素子(CMOS-APS)の開発:非破壊検出回路を組み込んだCMOS設計の二次元イオン検出素子を製作した.
  3. CMOS-APSの駆動のためにFPGAを用いた回路を設計し,柔軟な駆動様式に対応できるようにした.次年度は,CMOS-APSの基本特性評価のために,均一なイオンビーム入射が可能となるよう3Fの改造を行いたい.

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