昭和三十年 漕艇部部歌 -春三月の(茨戸の歌)- 木原慎一君 作歌・作曲 1. 春三月の蝦夷島 長き眠りにとざされし 茨戸河畔の雪とけて とく待ちわびし水の子の 喜び笑ふ声すなり 2. 岸の辺近く郭公の 啼く音うれしく聞き初めね 漕ぎ来し方を眺むれば 霞にとける野の煙 水郷の春の昼閑か 3. 岩燕は去りて風熱き 夏たけなはの候となる 運河一発引き抜きて しばし憩はむ土手の上 羊も寄りて草を食む 4. いつか炎暑の日はゆきて 光のどけき茨戸河 青き水の面に波立たず こよなき季節訪れぬ 心ゆくまで漕がむかな 5. 手稲は紅く空高く 秋の気深くなりにけり かい先近くぼらはねて 夕練習終へるころ 陽はくれないに没したり 6. 河霧深くたちこめて 霜結ぶ朝艇出す みぎわの木々は枯れはてて 冬もま近となりぬれば 惜しみて漕がむ残る日々 7. 北風すさび雪は舞ひ ふぶきに暮れる冬の河 今日ぞわれらが漕ぎ納め いざわが友よ胸深く また来む年の幸思へ