昭和十三年寮歌 津軽の滄海の 二階堂孝一君 作歌 高橋寛君 作曲 (1,2,3 了あり) 1. 津軽の滄海の渦潮わけて 雄大き想ひを北斗に馳する 若き情懐は北溟の自然に 抱擁かれて今野心培ふ 2. アカシヤの白花散り敷く夕べ 白銀の月仄かに浮ぶ 牧場添ひの野路逍遙ひゆけば 羊の群は声なく去りぬ 3. 石狩の平野に爽夏訪れて 原始の大森は緑影も小暗し 郭公の朗声静寂に徹り 清涼しき朝の熟睡を破る 4. 豊穣の秋の讃歌を奏で ポプラの高梢さやかに揺ぐ 北溟の蒼穹紺碧に透き 生の歓喜我が胸懐に充溢つ 5. 飄々の風声疎林に沈潜み 無限の静寂天地に充満てり 寒月は鋭利く虚空を截りて 我が行く孤影よ霜に凍りぬ 6. 白銀の六華荘厳に咲く 山嶺奥深く彷徨れ行けば ああ壮麗の樹氷の森よ 冬の神秘に我が胸戦傈ふ 7. さあれ戦塵東亜を閉鎖し 全支の空に硝煙昏冥し 大陸飛翔る荒鷲想へば 雄心湧きて若き熱血滾る 8. 先人の絢夢残れる原始林に 寮祭の犠牲の火柱廻りて いざ寮友どちよ永久に謳歌はん 意気と血潮の三年の契り