大正七年寮歌 花を褥 松本五六君 作歌 峰秀雄君 作曲 (1 了あり) 1. 花を褥の草枕 霞に暮るる野辺の春 ローマの晨ナイルの夕べ 栄華よあはれ夢の跡 傾く月に猶心せず 驕奢に酔ひし人々の 惰睡を破る雄叫や 健児義を取る北の国 2. 世の敗頽に神怒り 南の洋に濤さわぎ 腥風荒さび天日暗く 欧亜の文華影消えぬ 堯舜去りて妖雲霽れず 江河氾濫れて末濁る 暴虐無道幾年ぞ 吾等立つべき時ぞ今 3. 煙霞曠しき石狩の 荒野に立ちて嘯けば 霜枯れ吹雪く原始の森に エルゼの歌も微かなり 手稲の嶺に夕陽淡く 宇宙の神秘畏れみて 雄々しき自然に育まれ 雲呼び沖天に翼搏たん 4. 春の女神の訪れに 花は綻び鳥謡ひ 翠の樹蔭に鈴蘭香り 露の涼しき夏の朝 時雨に漂ふ牧場の紅葉 白雪晴るる冬の景 書読む歳は豊平の 時の流れに恵あり 5. 薫る春風アカシヤの 情操床しき若人が 崇き希望の象徴と仰ぐ 聖き北斗の瞬に 真理の道の暗示を索め 純しき玉の緒一百を 一つに懸けて結びたる 自治の基礎動きなし 6. 烏兎流光の移ろひて 昔の友は在はさねど 十三年の光栄ある歴史 護り伝へて極限無し 自由の大旆正義の剣 天下の民を済ふべし 戦の場の首途とて 宴の盃いざ汲まん