明治四十年寮歌
一帯ゆるき
田中義麿君 作歌
高松正信君 作曲
(1,2,3 了あり)

1.
一帯(いったい)ゆるき石狩(いしかり)
(みなもと)(とほ)(かすみ)()
五彩(ごさい)()むる夕照(ゆふやけ)
手稲(ていね)(なつ)(はえ)にして
そこに無限(むげん)恩寵(めぐみ)あり
(これ)(わが)(かう)()(ところ)

2.
胡沙(こさ)()(かぜ)(あき)()けて
黄葉(もみぢ)()りしく牧場(まき)千里(せんり)
満野(まんや)吹雪(ふぶき)叱咤(しった)する
エルムの姿(すがた)(さう)なれや
そこに無限(むげん)偉力(ちから)あり
(これ)(わが)(れう)()(ところ)

3.
(おも)へば(とほ)三十年(みそとせ)
榛莽(しんまう)あしたの()(おほ)
ゆふべの(つき)羆熊(くま)()ゆる
北海(ほくかい)()鋤入(すきい)れて
偉人(いじん)()ゑし桜花(さくらばな)
(かほり)(たか)千万古(せんばんこ)

4.
(うみ)(へだ)てて(みんなみ)
(そら)彼方(かなた)(なが)むれば
古人(こじん)(みち)(あと)もなく
文明(ぶんめい)(とく)(なほ)()らず
溟濛天(めいもうてん)(みなぎ)りて
帰鳥(きてう)(ゆふひ)彷徨(さまよ)ひぬ

5.
颷々(へうへう)として
風狂(かぜくる)
北海(ほっかい)潮黒(しおくろ)むとき
電光凄(でんこうすご)(はや)りては
(おに)啾々(しゅうしゅう)(こえ)すなり
破邪(はじゃ)(つるぎ)右手(めて)にして
()てるは()ぞや(われ)健児(けんじ)

6.
岩間(いわま)(たけ)渓流(けいりう)
明日(あす)黄河(こうが)(なみ)うたむ
蟄竜(ちつりょう)(つひ)(くも)()
鳳雛(ほうすう)やがて(とき)()
扶揺(ふよう)()って(うつ)りなば
魍魎(まうりやう)(つひ)(かげ)もなし