明治四十五年寮歌
都ぞ弥生
横山芳介君 作歌
赤木顕次君 作曲
(1 了あり)

1.
(みやこ)弥生(やよい)(くも)(むらさき)
(はな)()(ただよ)宴遊(うたげ)(むしろ)
()きせぬ(おごり)()(くれなゐ)
その(はる)()れては(うつ)らふ(いろ)
(ゆめ)こそ一時(ひととき)(あお)(しげ)みに
()えなん我胸(わがむね)(おも)ひを()せて
星影(ほしかげ)(さや)かに(ひか)れる(きた)
(ひと)()(きよ)(くに)ぞとあこがれぬ

2.
(ゆた)かに(みの)れる石狩(いしかり)()
(かりがね)遙々(はるばる)(しず)みてゆけば
羊群(やうぐん)(こえ)なく牧舎(ぼくしゃ)(かへ)
手稲(ていね)(いただき)黄昏(たそがれ)こめぬ
雄々(おお)しく(そび)ゆる(エルム)(こずえ)
打振(うちふ)野分(のわき)破壊(はゑ)葉音(はおと)
さやめく(いらか)久遠(くをん)(ひか)
おごそかに北極星(ほくきょくせい)(あお)(かな)

3.
寒月(かんげつ)(かか)れる針葉樹林(しんようじゅりん)
(そり)()(こほ)りて(もの)(みな)(さむ)
()もせに(みだ)るる清白(せいはく)(ゆき)
沈黙(しじま)(あかつき)霏々(ひひ)として()
ああその朔風(さくふう)飊々(へうへう)として
(すさ)ぶる吹雪(ふぶき)逆巻(さかま)くを()
ああその蒼空(さうくう)(こずえ)(つら)ねて
樹氷(じゅひょう)()壮麗(そうれい)()をここに()

4.
牧場(まきば)若草(わかくさ)陽炎(かげろふ)()えて
(もり)には(かつら)新緑(しんりょく)(きざ)
(くも)ゆく雲雀(ひばり)延齢草(えんれいそう)
真白(ましろ)花影(はなかげ)さゆらぎて()
(いま)こそ(あふ)れぬ清和(せいわ)陽光(ひかり)
小河(おがわ)(ほとり)をさまよひゆけば
うつくしからずや()水芭蕉(みづばせう)
(はる)()のこの(きた)(くに)(さち)(おほ)

5.
朝雲(あさぐも)(なが)れて金色(こんじき)()
平原(へいげん)()てなき(ひむがし)(きは)
(つら)なる山脈(やまなみ)玲瓏(れいろう)として
(いま)しも(かがや)紫紺(しこん)(ゆき)
自然(しぜん)藝術(たくみ)(なつかし)みつつ
高鳴(たかな)血潮(ちしほ)のほとばしりもて
(たふ)とき野心(やしん)(をし)(つちか)
(さか)()我等(われら)(れう)(ほこ)らずや