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 月のサンプル

アポロの探査によって合計で約380kgもの月の石が持ち帰られました.これらのサンプル を分析することで,我々人類は月がどのような物質でできているのか,現在の姿になるまでどんな出来事があったのかということについて多くの知識を得ました.ここでは月面に存在する代表的な岩石について見てみることにします.

玄武岩 斜長岩 角礫岩 インパクトメルト角礫岩

  1,海の石

 玄武岩 玄武岩は月の海に分布する黒っぽい岩石.地球上において玄武岩は海洋地殻を形成している.鉄,チタン,マグネシウムに富み斜長岩に比べ密度が大きい. 粘性が小さく,およそ39〜30億年前 (25億年とも言われている) にかけて洪水玄武岩として噴出しべースンを埋めたと考えられている.薄片の偏光顕微鏡写真には,玄武岩を構成する鉱物である輝石(薄紫色),チタンを含むイルメナイト(黒色), 長石(白色又は茶色), カンラン石(それ以外の部分)が写っている.
アポロ11号で回収された玄武岩. LPI 薄片の偏光写真
NASA
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  2,高地の石

 斜長岩 高地の地殻の大部分を占める月の始原的な岩石. アルミニウムに富み密度が低い(約.2.9g/cm3). 写真の斜長岩はアポロの探査で採集された中でも最も古く,月そのものの誕生とほとんど等しい45.1〜44.4億年前に形成された. 月の形成直後は,表面の大部分が融解したマグマオーシャンであったと考えられており,冷却の過程で軽い斜長岩が浮かび上がり固化し地殻となった. 薄片写真の白い部分は長石である.
アポロ16号で回収された斜長岩. LPI 薄片の偏光写真
Moon Rocks through the Microscope
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 角礫岩 いろいろな岩石の破片が寄り集まって形成された,高地では最も良く存在している岩石. 月は長い歴史を通じて無数の隕石の衝突にさらされてきた. その結果生じた岩石の破片が衝突の熱や圧力で再結合し角礫岩となった. 写真にも岩石を構成しているいくつかの岩片を確認することができる. 又,結晶構造を見ると中央に玄武岩と思われる構造を含んでいるのが分かる. このように角礫岩は,高地起源だけではなく海起源の岩片,さらには一世代前の角礫岩をも含むことが出来る.
アポロ16号で回収された角礫岩. LPI 薄片の偏光写真
Moon Rocks through the Microscope
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 インパクトメルト角礫岩 様々な高地の岩石の破片が,隕石の衝突によって融解し再結晶化したマトリクスによって接着され集合したものである. 融解した部分(インパクトメルト体と呼ぶ)の化学組成は玄武岩に近くLKFM玄武岩と呼ばれている. 海の玄武岩が火山性であるのに対し,LKFM玄武岩は衝突による融解で生成されている点が異なる. インパクトメルト体は高地の地殻に多いアルミニウムには乏しく,一方で鉄を含んでいる. 地球上の衝突によって形成されたインパクトメルトの分析によれば,組成は標的物質全体の平均的な化学組成を示すことが知られている. したがって,LKFM玄武岩は上部地殻ではなく下部地殻やマントル(20-60km)が融けて出来たものと考えられている. べースンを形成した巨大衝突であればLKFM玄武岩の組成は説明できる. 又,同位体年代測定によると月サンプルのインパクトメルト角礫岩の形成年代は39-38億年に集中し,この時期にべースンを形成するほどの巨大な天体の衝突が相次いだ可能性も提唱されている.
アポロ16号で回収されたインパクトメルト角礫岩.
LPI
薄片の偏光写真
Moon Rocks through the Microscope
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Last Updated 2002.Oct.10
by Yuuichi Nakagami