Topic
クチン・スベリンの高分子構造モデル
植物の抵抗性高分子クチン・スベリンによる化学分類


 
植物体には様々な有機化合物が含まれており、生体植物ではDNAやタンパク質を用いて化学的に分類を行うことが可能である。これらは植物の死後、微生物分解により速やかに失われてしまい、 続成過程を経た植物化石や堆積物中植物由来有機物の化学分類に用いることができない。そこで、そのような化石や堆積物中にも保存される微生物分解や続成作用に抵抗性がある有機化合物をバイオマーカーとして化学分類を行う研究が行われている。形態的特徴を保存した植物化石の産出が限られている地質時代であっても、断片的な化石や堆積有機物からの化学分類で起源について解明できれば、 植物分類学や陸上植物の進化史、更には植生復元、古環境復元といった研究が大きく進歩することが期待される。しかし、このような有機物も微生物分解や続成作用の影響を多少は受けており、生体時の化学組成をそのまま保存しているわけではない。生体時の分類群や部位による特徴、堆積環境による分解の度合い・保存のされやすさなど様々な要素を考慮する必要がある。今回は、特に分解や続成作用を受けにくい抵抗性高分子クチンおよびスベリンの生体植物中の化学組成、構造、その堆積後の変化と変化後の応用について紹介する。


図C1 クチンポリマーのモデル図(Pollard et al., 2008).


参考文献
1. Pollard, M., Beisson, F., Li, Y., Ohlrogge, J.B. (2008) Building lipid barriers: biosynthesis of cutin and suberin. Trends in Plant Science, 13, 236-246.