卒論について
- 自己整合的な水星の内部構造モデル
卒論では還元的材料物質からの水星の形成というタイトルで水星の内部構造モデルを考えた。
水星の形成は現在の軌道半径程度の、原始太陽系円盤の最内領域でなされたと考えられる。
原始太陽系円盤では内側ほど還元的な環境であったことが予測されている。
そのような環境下では、水星がマントルの部分剥ぎ取りがないまま形成されたというシナリオも考えられる。
なぜなら、より還元的な環境を考えた時、SiやSの親石性 (lithophile) や親鉄性 (siderophile) が変化するからである。
本論文ではバルク組成を固定させ、Si, S, Oをフリーパラメータとしてとった「分配モデル」をもとにして、逐次近似計算によって自己整合的な半径-圧力-密度分布を得る「内部構造モデル」の2つのモデルから、水星内部の構造を計算した。
結果的には、バルク密度が足りず、やはり鉄の多さを抜きに水星を語ることはできないということを導いた。
<卒論>
akiba_B.pdf
卒論の内容に加えてさらにFeをフリーパラメータとして取り、バルク密度を上げる試みをした。 結果、材料中のFe存在度が元の1.75倍となった際、バルク密度、半径、慣性モーメント等が観測とほぼ一致するような結果を示した。 実際は、利用した物性値や液体、固体の差など加味すると、かなり大雑把な計算となっていることに注意が必要だが、 原始太陽系円盤内でFeの存在度の動径方向依存性があるとすれば、水星付近で1.75倍程度Fe/Si比の高い物質が集積することで、水星が形成されることも可能かもしれない。