DM2 ゼミ 要旨 2003


6/18 (水) 13:30- 小西 丈予
タイトル:

浅水系における軸対称渦の安定性について

要旨:

極渦からの重力波射出を示唆する観測結果 (Yoshiki et al., 2001 など) を念頭に、f-平面浅水方程式系を用いて有限領域における軸対称渦の安定性を調べた。

その結果、

1. 平行流に対する Ripa の安定条件 (1983,1987) を本系に適用し、コリオリ・パラメタとフルード数に応じて安定性領域を導いた。

2. 二次元極座標系スペクトル法 (石岡 2003) を用いて線形安定性解析を行い、無限領域における Ford の線形安定性解析 (1994) と整合的な結果を得た。

3. 上記のスペクトル法を用いて非線形の時間発展計算を行ったところ、パラメタ渦が崩壊するという結果が得られた。その際に、重力波が射出されたものと思われる。

といったことが現在までで得られた。

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/0618/present/


6/25 (水) 13:30- 柿並 義宏

タイトル:

金星電離圏の色々

要旨:

金星には固有磁場がないことが知られている。そのため金星超高層大気では太陽風と直接相互作用する. そのため固有磁場が存在する地球では見られないような現象が確認されている.

その現象の一つに hole と呼ばれる現象がある. 電離圏のプラズマ密度が局所的に減少しているように 見られる現象である.

この現象を理解するためにいくつか固有磁場を持たない金星特有の現象を知ってなければならない. 特に 磁場の draping は, hole 形成に重要な役割を担っていると考えられているため必須の知識である.

この2つの現象を中心に紹介するとともに, それ以外の金星固有の現象も紹介し, 金星の電離圏のおお ざっぱな知識を持ってもらうことを目標とする.

本研究ではoleでの電子温度の特徴を説明するために必要な条件, および hole形成に関係していると思わ れる電離圏での磁場 draping の特徴が分かった.

Hole内での電子温度の特徴を説明するために必要な条件
  • 周囲のプラズマより低いイオン温度
  • 電子を加熱する加熱源

電離圏における磁場 draping
  • 平均をとると磁場が強い時( >10 nT ) と弱い時 ( < 10 nT ) で draping が違っている

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/0625/index.htm


07/16 (水) 13:30- 山田 由貴子

タイトル:

赤道波による熱帯循環の基本特性の理解 〜 院試のための(??) 今後の研究計画 〜

要旨:

熱帯の降水分布や循環構造を理解するための試みのひとつに, Hayashi and Sumi(1986) をはじめとする大気大循環モデル (GCM) による一連の水惑星実験があります. GCM は, 用いる解像度や力学過程, 物理過程のパラメタリゼーションの選択によって得られる結果が異なります. またこの違いを生じる原因は多岐にわたることから, 水惑星のような簡単化した境界条件を用いても, 結果の解釈やモデルの信頼性の議論は難しいのが現状です.

そこで修士では, 熱帯循環や GCM の基本特性を理解するために, 以下のような研究を行います (と院試ではでっちあげる予定です. ほんとは何にも決めてません…).

AGCM6 による比較実験
AGCM6 は地球流体電脳倶楽部が開発を進める GCM です. この AGCM6 を利用し, 近似された簡単モデルから順に GCM のような複雑モデルを構築します. そしてこれらのモデルで比較実験を行い, 力学過程, 物理過程, 解像度の違いによる影響を赤道波の活動度の鉛直構造依存性に注目して解析します.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/0716/html/


7/23 (水) 13:30- 佐々木 洋平
タイトル:
SPMODEL 群の一環としての回転球殻 MHD ダイナモの数値モデルの構築
要旨:

近年の計算機性能の向上に伴い, 天体固有地場生成維持機構の解明を目的とした, 回転球殻 MHD ダイナモの数値計算が精力的に行なわれつつある.

しかしながら, 現在行なわれている計算は, そのパラメータ設定が現実の天体のとはかけ離れているため, 得られた知見は重要な示唆を含むものの, 現実の現象を表しているかは定かではない.

数値計算において現実の現象を再現し理解を深めるためには, 乱流拡散や渦粘性など, サブグリッドスケールの物理の詳細を把握しておく必要がある.

本発表では, 上記目的のための道具として現在我々が整備しつつある 階層的スペクトルモデル集(SPMODEL)を用いて 回転球殻 MHD ダイナモを構築した際の結果を紹介する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/0723/2003-07-23.pdf


8/06 (水) 13:30- 杉山耕一朗
10/15 (水) 13:30- 島沢竜平
タイトル:
衛星系形成におけるダスト・微惑星の移動
要旨:
Mosquiera and Estradaらは, icarus(1995)において 太陽系内の衛星系形成についての全体的なシナリオを 描いている. このシナリオではこれまで行われてきた 衛星系形成に関する研究データを考慮しており,統一的な 衛星系形成理論としては初めてのものである.

Mosqueira らのシナリオは太陽系形成論と同じく, 最小 質量モデルを基にし, 主星の周りにガス, ダストからなる 衛星系円盤を仮定し, その円盤中で衛星集積が起こると 考えている. 当然その形成過程は太陽系におけるそれと 似たような過程を経ると考えられる. しかし, 衛星衛星系 においては, 密度, 温度などの パラメータの違いにより, 太陽系円盤では無視されていた 現象が重要となる. その現象の一つがダスト, 微衛星の 移動である.

ダスト, 微衛星の円盤中での移動速度は, ダスト, ガスの2流体方程式を 解き, 得られた解に対して衛星系での密度, 温度分布を 適用することで得られる. 計算の結果, 木星衛星系では ダスト半径が10cm程度のとき, ダストの位置によらず, 動径方向の速度が最大になることがわかった.

実は, Mosquiraらのシナリオでは, マイクロメートル サイズの ダストからkmサイズの微衛星への集積過程は, 粒子層の 重力不安定のみを考えることで, (衛星系形成時間に比べて) 短時間で終わると見積もられており, 固体物質の移動に ついては考慮されていない. ここで得られた結果を使って ダストの合体成長方程式を解き, マイクロメートルサイズの ダストから微衛星への成長を細かく追うことにより, この過程の検証を行うことができるだろう.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/1015/index.html


10/29 (水) 13:30- 高橋 こう子
タイトル:
3 次元雲モデル -研究紹介-
要旨:

様々な災害にも関係する積雲を理解するために 3 次元雲モデルを作成する. ここでは,積雲について簡単な解説と, 3 次元雲モデル作成時に参考にした論文 Klemp and Wilhelmson (1978) と研究内容の 簡単な紹介を行なう.

Klemp and Wilhelmson (1978) では, 雲・降水の物理過程は暖かい雲のみを考え, サブグリッドスケールの運動については 1 次のクロージャモデルを用いている. 本研究では Klemp and Wilhelmson (1978) に 地形を考慮したモデルを用いている.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/1029/index.html


11/12 (水) 13:30- 中神 雄一
タイトル:
タイタン大気の起源と進化の考察 -- CH4 の D/H 異常から --
要旨:

近年地上や地球周回軌道の望遠鏡によってタイタンの観測が非常に 高い分解能で行なえるようになってきた. ISO (Infrared Space Obserbatry) やハワイ島の大口径望遠鏡による赤外分光観測から タイタンの CH4 の D/H が原始太陽のそれよりも大きな値を持つ 事が確認さている.

このような同位体異常はタイタンの大気の形成や進化の過程に何 らかの分別過程があったことを示している. これまでの議論を大 別すれば, タイタンの上層大気における光解離による選択的な大 気散逸の効果とタイタンを形成した solar nebula あるいは sub nebula 中における分別によるもの, 2 つの説が提唱されている.

この 2 つの説はタイタンの表層の進化過程を探る手がかりとして も興味深い. 前者は表層の CH4 の海などの限られた CH4 リザーバ と調和的であり, 後者はタイタンの内側に存在すると考えられてい る CH4 の包接化合物の層からの継続的な脱ガスと整合的である.

本発表では Mousis et al.,2002 の solar nebula による CH4 の D と H の分別についての議論を紹介し, タイタン大気の起源と進化 について考察し検討を行なう. 後半では検討をもとにして今後の研究 方針についても触れる.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/1112/intro.html


12/10 (水) 14:00- 村田 泰洋
タイトル:
氷床流動モデルの開発
要旨:

現在, 開発中の氷床流動モデルの定式化と数値実験を行ない, 現在構築中の氷床モデルの現状を紹介する.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/1210/


01/14 (水) 13:30- 山田 由貴子

タイトル: 修士論文発表の練習の練習: 水惑星実験による熱帯域降水活動の長波放射加熱率鉛直分布依存性に関する研究

要旨:

本発表では, 修士論文の内容について以下のように紹介した:

熱帯域の降水活動の放射冷却率鉛直分布依存性を GCM を用いた水惑星実験によって調べた. 実験は, 長波放射過程の乾燥大気の吸収係数を変えた 5 つのケースの実験を積雲パラメタリゼーションに Kuo(1974) と対流調節を用いて計 10 ケース行った.

積雲パラメタリゼーションに Kuo を用いたケースでは, 水平スケール 1000 km 程度の格子スケールの降水域と水平スケール 100000 -- 200000 km の 2 つの降水域の構造が存在する. 格子スケールの降水域は, 中層で放射冷却率の最大値を持つケースでは西進するが, 上層で放射冷却率の最大値を持つケースでは東進する. 水平スケール 100000 -- 200000 km の降水域はどのケースでも東進する.

積雲パラメタリゼーションに対流調節を用いたケースでは, 格子スケール, 水平スケール 3000 km, 100000 -- 200000 km の 3 つの降水域の構造が存在する. 格子スケールの降水域は, 放射冷却率を変えたどの実験ケースでも西進する. 水平スケール 3000 km の降水域は, 格子スケールの降水の包絡の東進として存在し, 上層で放射冷却率の最大値を持つ実験で特にはっきりと見られる. 水平スケール 100000 -- 200000 km の降水域はどのケースでも東進するが, このスケールの変動は非常に弱いものである.

本実験の積雲パラメタリゼーションに Kuo を用い, 放射冷却率が上層で最大値を持つ実験ケースは, Numaguti and Hayashi (1991a) の格子スケールの降水域の東進と似た傾向を示す. Numaguti and Hayashi (1991a) のモデルの放射冷却率の鉛直分布は, 上層で最大値を持つ傾向にあったのかもしれない.

発表資料:

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~dm2semi/2003/0114/pub/


最終更新日: 2004/01/18 小西 丈予