Last modified: Tue Dec 5 19:24:23 JST 2000
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2. ディストリビューション

2.1 イントロ

Linux にはさまざまなディストリビューションがあります.そもそも Linus さんは自分が使えれば良いというような方針の人っぽいので, 特に Linux をパッケージ化することはしませんでした.そのため, 自然発生的にそれらをまとめてくれる人(達)が現れます.当然,それに 対抗する人も現れます.当の Linus さんはそれを止めませんでした. その結果世の中には歩けばディストリビューションに当たるというくらい にまで溢れかえってしまいました.

一番初期のディストリビューションは SLS(Softlanding Linux System) と呼ばれるものです.残念ながら僕は SLS を利用したこともお目にかかった こともありませんので良く分かりませんが,後にこれを改良した Slackware が登場します.この Slackware は今でも更新されています. Slackware はパッケージという概念は存在していますが,パッケージ管理 という概念は存在していません.このことが多くの一般ユーザーを確保 することに障害となると考えた RedHat 社は,RPM(RedHat Package Manager) によるパッケージ管理を導入しました.これによりユーザー層が広がった ことは疑う余地のないところだと思います.その後 Debian というプロジェクト が立ち上がり,deb という異なるパッケージ管理プログラムが作られ, それを基としたディストリビューションが出来ました.なぜ RPM がありながら deb にしなければいけなかったかは僕が Debian 使いではないので分かりません.

RPM,deb によるパッケージ管理が確立されたため,現在では多くの ユーザーを獲得するために,インストールが楽なもの,ソフトが多いもの など,さまざまなディストリビューションが世に出るようになりました. 以下に,主要なディストリビューションを系統別に紹介したいと思います.

2.2 Slackware (tar+gz)系

2.2.1 Slackware

Slackware は各ソフト(及びドキュメント)が tar+gz でまとめられたもので, インストール作業はこれらを展開するという非常にシンプルな構成となっています. また,ディレクトリ構成も BSD よりとなっています.例えば起動スクリプトのある 領域のディレクトリ構成は

/etc
 +- rc.d/
     +- rc0.d
     +- rc.local

のようになっていて,それぞれのランレベルに対して一つの起動部の ディレクトリ構成は

Slackware には簡単なパッケージ管理は存在しています.従って,実際の インストール作業には installpkg というコマンドを用い, アンインストールには removepkg を用います.しかしながら,これらの コマンドは補助的にすぎません.このため,Slackware を新しいバージョンに するためには,インストールをし直すことが一般的となっています.また, 管理コマンドもありませんので,/etc のファイルを自分で書き換える必要が あります. ただ,パッケージ管理というシガラミがない分だけマニアや,きちんと UNIX を 理解しようとする人にとってはもってこいのディストリビューションといえます.

2.2.2 Plamo Linux

Slackware をベースに日本語化したものが Plamo Linux と呼ばれるもので, こじまさん(個人!)が取りまとめています.Plamo Linux の強みとしては Slackware 同様使い倒せることと,PC98 対応をしている唯一のディストリ」ビューションだということです.基本的特徴は Slackware のそれとほとんど変わりません.

2.3 RPM 系

2.3.1 RedHat Linux

RedHat 社がまとめているディストリビューション.RPM を用いたパッケージ管理 により,Slackware では簡単に行うことの出来なかった,バージョンのアップグレード も比較的簡単に行うことが出来るようになりました.Slackware とは ディレクトリ構成が異なっています.その例として,起動スクリプトのある ディレクトリ構成は

/etc
  +- rc.d/
       +- init.d/
       |     +- network
          :
       +- rc0.d/
       |     +- K90network
          :

のようになっています.世の中に出回っている多くの RPM 系のディストリ ビューションは RedHat Linux がベースとなっています.

2.3.2 Vine Linux

Project Vine が提供するディストリビューションで,これは RedHat Linux をベースとしてそれを日本語化したものです.従って構成は RedHat Linux と似ています.また,開発ポリシーも安定重視なので,一般的な(日本)人 が安心して使えるディストリビューションといえます.今後は Project Vine の成果物が RedHat に取り込まれるようですので,Vine Linux の独自色 はどうなるのかは現在のところ僕には良く分かりません.

2.3.3 Turbo Linux

Turbo Linux 社が提供するディストリビューション.かつては RedHat を ベースとしていたようですが,現在ではその面影もほとんどなく,RPM を利用しているというよりはむしろ まったく別のものと考えた方が良いみたいです.僕は使った ことがないので分からないのですが,印象としては,積極的にいろいろな 商用ソフトをバンドルしたり,アドミンツールなどを用意することに よって,「これさえいれればなんでも,しかも簡単にできまっせ」と 訴えかけて人々をひきつけようとしている感じです.他のディストリビューション と比べてくせがあるディレクトリ構成のため,敬遠している人もいるようです. でも,やっぱり ATOK や VMWare がついてくるなど魅力の多いディストリビューション だったりします.

2.3.4 Laser5 Linux

Laser5 社が提供するディストリビューションです.Laser5 社自体はかつては 輸入 CD-ROM を取り扱う小さな会社で,その一部で Linux も扱っていました. 当時は Slackware + JE や Debian GNU/Linux なども販売していました(たぶん 今でも販売しているでしょうが…).その後 Laser5 が RedHat 社とパートナーシップ 契約を結ぶことにより日本語化 RedHat を販売していました.しかしながら, RedHat が日本法人を設立する際にその契約を一方的に破棄したため,独自の ディストリビューションを出すことを強いられました.それが Laser5 Linux です.独自といっても,RedHat ベースであることはかわりありませんので, RedHat を日本語化したものと思っていただいても構わないと思います(少くとも 現在のところ).ただし,出来映えは RedHat 日本法人の出す RedHat 日本語版 とは比べ物にならないほどよいです.ただし,今後は RedHat 社に Project Vine の成果物が取り込まれるのでどうなるかは分かりません.

2.3.5 Kondara Linux

Kondara Linux は RedHat 社の開発バージョンである RawHide をベースとした 不安定指向…ではなくて最新を追い掛けるものをターゲットとしたディストリ ビューション.簡単に言えばマニア御用達のディストリビューションと 言えるかもしれません.ただし,マニアな人が多いだけあって,成果物は 素晴らしいものが少くありません.初心者が首を突っ込むと, 火傷をする可能性ありの危険な香りのするディストリビューションです.

2.4 deb 系

2.4.1 Debian GNU/Linux

Debian プロジェクトがまとめているディストリビューション.GNU の言葉 が示す通り,パッケージの(たぶん)すべては GPL に則ったソフトで占められています. Debian は deb という独自のパッケージ管理を採用しています.パッケージ 管理方法,及び開発体制は非常に優秀なのですが,インストールの敷居が 非常に高かったために,思うようにユーザーを確保できませんでした. その後改良が施され,かなり楽になりましたが,一番ユーザーを獲得できそうな 時期にハードルが高かったのは致命的とも言えました(potate が出るのが 遅かったことが致命的という話もありますが…).

起動スクリプトのあるディレクトリ構成は RedHat に近く

/etc
  +- init.d/
  |     +- network
     :
  +- rc0.d/
  |     +- K90network
     :

のようになっています.

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kato@ep.sci.hokudai.ac.jp