忘年会にて


 2001年の年末。
卒論、専攻サーバ管理、パソコンの修理、バイト、T.A.、サーバトラブルで
全て語れそうな一年を忘れる時期がやってきた。 そう、忘年会シーズンの到来である。
院生のくせに全く研究していない上にダメサーバ管理者ぶりを露呈した一年など
忘れてしまった方がいいのだ。

 それは情報実験のT.A.が翌日に控えていた日のこと。
授業の資料の作成中、隣人が言い包められ突然決定した院生同士の忘年会に誘拐された。
資料が完成してからメールで様子を尋ねてみたらS藤が暴れそうだ、との事。
S藤は以前卒業式後の打ち上げで四年生控え室のパーティションのガラスを
破壊した前科を持っているので自分も応援にいくことにした。
というのは言い訳で、実は単に酒が呑みたかっただけ。
大通りで呑んでいる、と聞いて何も考えずに自転車で行った事が後の事件の伏線になる。

 飲み屋に到着。 参加者はS藤を始め、皆すっかり出来上がっている。
しかし、自分が飲み始めてから30分も経たないうちに一次会は終了。
時期が時期だけに皆結構ストレスが溜まっている。
当然のように二次会開催が決定。
誘拐された隣人W川が塩辛を食べるよう強要されていた。
どういう趣旨の罰ゲームだったのだろうか。

 二次会はすすきので、ということになった。
雪が降っている事もあって地下街を通って移動する事に。
自転車を置きっぱなしにしておきたくないので自分は先回りする、
と言って自転車にまたがろうとした。

ところがF川さんがこんな事を言い出した。
「そのまま地下に持っていきなよ」
ここで「それもありかな」とあっさり納得してしまったのが最大の失敗だった。
地下への階段を下りながら理性が崩壊していくのを感じつつ止められなかったあたりに
自分もそこそこストレスを溜めていた事が窺える。(言い訳にすらならないが)

 その一分後、自分は地下街を自転車を押しながら歩いていた。
他の酔っ払い達も止めるどころか二人乗りを始めてしまう。

大通りへ向かう人並みに逆行してすすきのに向かう酔っ払い達。
その一行に混じって何故かライトを点灯した自転車を押す馬鹿が一人。
通り過ぎる人は必ず後ろを振り返り、その目は好奇に満ちている。
恥ずかしそうに下を向いたら負けである。
この時の周囲からの視線がどれくらい痛いか想像できるだろうか。
自業自得以外の何者でもないのだが、とりあえず素面ではやっていられない。
前の飲み屋さんで余ったから持ってきたワインをラッパ飲みしつつ歩く。
本人の気分はいくらか紛れるのだが、周囲の人々の評価は下がる一方である。

 地下鉄すすきの駅に到着。
その場でどこの店に行くか相談を始める。
うらやましそうに自転車を見ていたW川に冗談で
「チャリでポー○タウンを往復してみるか?」と言ってみた。

すると、颯爽と自転車に乗りポ○ルタウンへ逝ってしまった。
その直後、地下街に放送が流れる。
よく聞き取れなかったのだが、趣旨はこんな感じ。
「地下街で自転車に乗っている人、今すぐ出て行きなさい!」

 その一分後。
意気揚揚と自転車に乗って旅立ったW川が遠目に見てもはっきりわかるくらい
がっくりとうなだれて自転車を押して戻ってきた。
彼曰く、「大量の警備員に囲まれて、ものすごく怒られた」との事。
そりゃそうだ。

 自転車と共に外に出た一行。
飲み屋をどこにするか、の相談は続く。
結局24条の飲み屋に決定。
皆が地下鉄で移動し、自分は吹雪の中必至に自転車で移動。
そう、地下街を自転車で移動したのは全く無意味だったどころか
W川に一生もののトラウマを負わせてしまったのだ。

 最後にこの後の酔っ払い達の会話を一部引用して
この「忘年会で一つ忘れたい事が増えてしまった」話を終わりにする。
「なんで地下街を自転車で移動しちゃダメなんだろうね」

「そういえば標識とかないよね」

「確かに標識はないけど常識もないんじゃない?」

標識はないけど常識もない…言い得て妙だと思いませんか?

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02/03/09 作成